平成25年10月7日京都地方裁判所判決(朝鮮学園vs在特会外)をどう読むか?

平成25年10月7日京都地方裁判所判決について、様々な議論がネット上で行われているようですが、判決の内容を纏めると以下のようなものです。

(在特会らによる示威活動、映像公開の違法性について)
いずれも、業務妨害、名誉毀損の成立により違法性を認定するという従前からの判断枠組みを維持しています(判決文68頁「2」、同69頁「3」、同70頁「4」、同71頁「5」参照。

(人種差別撤廃条約の効力について)
このように、人種差別撤廃条約2条1項は、締結国に対し、人種差別を禁止し終了させる措置を求めているし、人種差別撤廃条約6条は、締結国に対し、裁判所を通じて、人種差別に対する効果的な救済措置を確保するように求めている。これらは、締結国に対し、国家として国際法上の義務を負わせるにとどまらず、締結国の裁判所に対し、その名宛人として直接に義務を負わせる規定であると解される。このことから、わが国の裁判所は、人種差別撤廃条約上、法律を同条約の定めに適合するように解釈する責務を負うものというべきである(判決文66頁「4」参照)。

(ヘイトスピーチそれ自体が不法行為となることは否定)
もっとも、例えば、一定の集団に属する者の全体に対する人種差別発言が行われた場合に、個人に具体的な損害が生じていないにもかかわらず、人種差別行為がされたというだけで、裁判所が当該行為を民法709条の不法行為に該当するものと解釈し、行為者に対し、一定の集団に属する者への賠償金の支払を命じるようなことは、不法行為に関する民法の解釈を逸脱しているといわざるを得ず、新たな立法なしに行うことはできないものと解される。条約は憲法に優位するものではないところ、上記のような裁判を行うことは、憲法が定める三権分立原則に照らしても許されないものといわざるを得ない。(判決文66頁「5」参照)

⇒ 特定人の権利を侵害しないヘイトスピーチは不法行為とはならないことを明言しています。

(不法行為となるヘイトスピーチ=具体的な被害者のいるヘイトスピーチについては、損害額が加算されるべき)

したがって、わが国の裁判所は、人種差別撤廃条約2条1項及び6条の規定を根拠として、法律を同条約の定めに適合するように解釈する責務を負うが、これを損害賠償という観点からみた場合、わが国の裁判所は、単に人種差別行為がされたというだけではなく、これにより具体的な損害が発生している場合に初めて、民法709条に基づき、加害者に対し、被害者への損害賠償を命ずることが出来るにとどまる。

⇒ 繰り返し、特定人の権利を侵害しないヘイトスピーチは不法行為とはならないことを明言しています。

しかし、人種差別となる行為が無形損害(無形損害も具体的な損害である。)を発生させており、法709条に基づき、行為者に対し、被害者への損害賠償を命ずることが出来る場合には、わが国の裁判所は、人種差別撤廃条約上の責務に基づき、同条約の定めに適合するよう無形損害に対する賠償額の認定を行うべきものと解される。

やや敷衍して説明すると、無形損害に対する賠償額は、行為の違法性の程度や被害者の深刻さを考慮して、裁判所がその裁量によって定めるべきものであるが、人種差別行為による無形損害が発生した場合、人種差別撤廃条約2条1項及び6条により、加害者に対し支払を命ずる賠償額は、人種差別行為に対する効果的な保護及び救済措置となるような額を定めなければならないと解されるのである。(判決文67頁「6」参照)

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表現規制反対と衆議院総選挙の結果

つらい結果です。味方になってくれていた衆議院議員さんの半分近くが、議席を失いました。

しかし、選挙は水ものです。良くない結果になることも当然にあります。

表現の自由を守る戦いに終わりはありません。選挙で常に好ましい結果が出るとは限らない以上、脱力し、白旗を上げる訳にはいけません。

少しずつではありますが、表現規制反対派の地盤は強化されつつあります。今回の選挙の結果を見ても、これまでの活動の成果が無になった訳ではありません。

2005年の郵政選挙の時よりは、遥かにマシです。
2005年のときよりは、それでも、味方してくれる議員さんは、人数にして倍以上当選しているからです。
この7年間に、味方をしてくれる議員さんの母数がかなり増えていました。国政の場において、表現の自由への理解度と関心は高まりつつあります。

議員さんの人数が、増えただけではなく、所属する政党もバラエティに富んでいます。リベラルからド保守まで多様です。このことは、表現の自由の問題が普遍性のあるテーマであることを示しています。

「自分が不快に思う、あるいは、嫌いな表現」を守らない限り、「自分の好きな表現」も守れないのです。
このことは、頭では分かっていても、肌感覚では分かっていない人が多いです。

が、若い年齢層ほど、このことはよく分かっています。理解のある議員さんも若い方が多いです。

参議院にも味方の議員さんは沢山います。

時は、我らの味方です。とりあえず、一分一秒でも長く、踏ん張り、規制の動きを押し止めることが重要です。

そのためには、気を取り直して、これまでどおりのロビイング、情報の発信、来年の参議院選挙で改選を迎える議員さん達への支援、そして、次回の総選挙において、雪辱戦に挑む前議員さん達への支援を地道に続けるしかないのです。

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神世界グループ7社が解散公告!神世界の霊感商法事件:債権届出の期限が本年9月11日 速やかに神世界被害対策弁護団へ連絡を!

神世界による霊感商法事件の全容については ⇒ 神世界被害対策弁護団 をご参照下さい。


神世界被害対策弁護団の連絡先
リンク総合法律事務所 03-3515-6681


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既に教祖の斉藤亨被告が、組織的詐欺を認めている以上、そもそも神世界は、顧客名簿でわかる顧客:すなわち被害者全員に通知をすべきですが、神世界は不誠実にも、あえて被害者に知られないように、法人を解散しようとしています。

このまま被害者が泣き寝入りをすれば、犯罪収益が、斉藤被告らに温存される可能性があります。弁護団は、神世界側の代理人である鈴木秀男弁護士らとは、法人の解散前から、被害回復の交渉を続けています。

失権しないように、被害者が泣き寝入りをしないように、声をあげて、弁護団にご依頼ください。

既に弁護団を通じて、200人近くの被害者の財産被害が救済されています。

多くの被害者が声をあげると、対神世界、対裁判所(斉藤亨被告は第1審の実刑判決に対して控訴しています。)的にも強い影響があります。

被害者の意思を結集して、まとめて、神世界の代理人である「鈴木秀男弁護士」に請求し、被害者のすべての債権が失権しないように努力していこうと思っています。個別に交渉するよりは、弁護団として集団で交渉した方が有利な結果が得やすいですし、神世界側が被害者の無知を逆手にとったり、圧力等をかけたりすることも困難になります(これまでに、そのような対応が存在したと言う趣旨ではなく、いわゆる霊感商法事案、宗教被害事案における一般論です。)。

被害者の多くは、サロン名でしか、神世界グループを認識してない場合が多いことから、過去、存在したサロン(=ヒーリングサロン)の名称を公開します。

このサロン名の場所に通ったことがある方は、すべて被害者になりうる人です。

リストをご確認ください。

知人・友人・家族でこの名前のサロンに通ったことがある人をお知りの方は、この情報を教えてあげて下さい。

神世界グループサロンリストpdfをダウンロード

有限会社千手観音教会事業部の解散公告

有限会社みろくの解散公告


有限会社びびっととうきょうの解散公告

有限会社えんとらんすわーるとヒルズの解散公告

有限会社えんとらんすアカサカの解散公告

有限会社えんとらんすスリートゥー1の解散公告

有限会社E2の解散公告

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◆公開シンポジウム のお知らせ 「日本と諸外国における創作表現の規制の現状と課題」

コンテンツ文化研究会のブログより転載(リンクについては、一部、こちらで追加。)
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◆公開シンポジウム のお知らせ
「日本と諸外国における創作表現の規制の現状と課題」

日本の漫画やアニメといったコンテンツは強い訴求力と発信力があります。
その魅力については今更語るまでもないでしょう。
ただ、その魅力の大きさゆえに問題視される事や思わぬトラブルや誤解を招く事は珍しくありません。
「創作表現は原則自由であるべき」と当会は考えますが、こうした事態が頻発するのは漫画文化の発展に必ずしも良い影響を与えるとは言えないでしょう。

今回のシンポジウムは海外の各地域ごとの規制の状況や問題点を現地の専門家にお話していただき、様々な観点から世界各国における創作表現の自由、また日本におけるに創作表現の自由について改めて考えてみようと思います。

海外の情報を直接聞ける貴重な機会かと思いますので、表現規制現問題やコンテンツの海外展開に関心のある方は是非ともご参加ください。

日時: 2012年5月18日(金)18時30分~
会場: 日比谷文化会館 日比谷コンベンションホール(東京都千代田区日比谷公園1番4号)
定員: 180名(先着順・予約必須ではありませんが、定員を上回った場合は予約している方を優先させていただきます)
参加費: 無料

登壇者:(敬称略)
Charles Brownstein (CBLDF Executive Director)
Patrick W. Galbraith (「The Otaku Encyclopedia)著者」
林君和 (台湾アニメ情報誌「FRONTIER」編集長)
Rujirat Vinitphol (東京大学大学院学際情報学府博士課程)
森川嘉一郎(明治大学国際日本学部准教授)
藤本由香里(明治大学国際日本学部准教授)
山口貴士(弁護士:リンク法律事務所)

主催:コンテンツ文化研究会
協力:NPOうぐいすリボン

参加のお申し込みはこちらから
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CBLDF=Comic Book Legal Defence Fundについての一言の説明は、我が畏友にして、オタク関連の通訳、翻訳の達人である兼光ダニエル真氏(イベント当日も通訳として大活躍の予定。)のツイートを参照して下さい。

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【日本脱カルト協会】JSCPR公開講座2012「大学でカルトに入った私たち-得たもの、そして、失ったもの-」【大学のカルト対策】

JSCPR公開講座2012「大学でカルトに入った私たち-得たもの、そして、失ったもの-」

当会の公開講座では、主に大学に於けるカルトの活動とその対策に焦点を当ててきた。多くの大学でカルトへの対策が行われるようになった今、今回の公開講座では長年にわたってカルト対策に取り組んで来た教育者の講演と、元信者の言葉を通じて、カルトが私たちの人生にどのような影響をあたえるのかを考える。

日時 2012年6月30日(土)14:00-17:30 (13:30 開場)

■代表理事挨拶及び講演
西田公昭(立正大学)
「現在の大学でのカルト勧誘について2500名のアンケートから」

■基調講演
高木総平(元松山東雲女子大学教授)
「今、キャンパスでできること-28年のカルト問題への関わりから-」

■脱会者講演
「大学でカルトに入った私たち-得たもの、そして、失ったもの-」
竹迫之(統一協会脱会者・牧師)
他、親鸞会脱会者、摂理脱会者など

■指定討論
瓜生崇(真宗大谷派玄照寺住職・大阪大学)

場所 岡山国際交流センター国際会議場 >>アクセス

司会 平野学(慶應義塾大学) 山口貴士(弁護士)

参加費 当日受付、資料代1000円(学生聴講無料・但し要学生証)

■主催 日本脱カルト協会

■後援 日本学生相談学会

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【信教の自由】大学におけるカルト対策は、信教の自由を守るために必要です

新大学生狙う カルトに注意 サークルと称し勧誘活動

大学がカルト対策を行う理由はどこにあるのでしょうか?

全国カルト対策大学ネットワーク
のホームページには、以下のとおり、書かれています。

② 当ネットワークは、カルト対策を講じるにあたって学生の信教の自由を尊重します。 なお、信教の自由には、特定の宗教を信仰する自由に加えて、宗教を信じない自由及び宗教の選択における自己決定権を侵害されない自由も含まれることを確認しておきます。

ここでのキーワードは宗教選択における自己決定権です。以下の内容は私見であり、全国カルト対策大学ネットワークの見解ではないことをお断りしておきます。

今年の3月29日に、札幌地方裁判所は、統一協会を相手とする青春を返せ訴訟において、画期的な判決を言い渡しました。非常に参考になる判決であり、宗教選択における自己決定権について、先駆的な内容の判決であると言えます。以下、重要な個所を抜書きします。⇒ 判決を取られた郷路弁護士のHPには判決文が掲載されています。

我が国の社会一般の倫理観・価値観においては、人は故なき隷属から解放されるべきであるから、信仰による隷属は、あくまで、自由な意思決定を経たものでなければならない。

(中略)

宗教の伝道・教化活動は、自由な意思決定を歪めないで、信仰を受け入れるという選択、あるいは信仰を持ち続けるという選択をさせるものでなけれ ばならないのである。

(中略)

神の教えであること(教えの宗教性あるいは神秘性)を明らかにした上で相手方に信仰を得させようとするものでなければならないとすべきであ る。神秘と事実を混同させた状態で信仰を得させることは、神秘に帰依するという認識なしに信仰を得させ、自由な意思決定なしに隷属を招く恐れがあるため、不正 な伝道方法であるといわなければならない。

(中略)

入信後に特異な宗教的実践を求められる場合、その宗教の伝道活動においては、入信後 の宗教的実践内容がどのようなものとなるのかを知らせるものでなければならないとすべきである。信仰を得させた後で始めて特異な宗教的実践を要求することは、結局、自由な意思決定に基づかない隷属を強いる恐れがあるため、不正な伝道活動であると言わなければならない。


この基準によれば、統一協会以外のカルト的宗教団体の布教活動についても違法性を問うことが可能になる場面は大幅に増えます。と同時に、カルト団体側(主に統一協会)によるカルト対策批判が、非常に皮相的かつ的外れのものであることが明らかになります。

大学における布教のあり方が、学生の宗教的な自己決定権を侵害するようなものであってはならないことは当然であり、それは、信教の自由を保護するための措置であり、決して、表現の自由を侵害するものではないのです。


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【著作権法】著作権法違反被疑事件で不起訴処分3件

久しぶりの更新になります。何とか、1年間のブランクを空けずにすみました。

私が刑事弁護人をしていた、3件の著作権法違反被疑事件について、今年の3月中にいずれも不起訴処分(嫌疑不十分)になりました。処分をしたのは、北陸の某地検の支部です。

示談はしていません。警察、検察官と正面から著作権法の解釈についての議論を戦わせ、勝ちえた結論です。

3件ともブログの記事を巡るものです。告訴人の背景には某宗教団体が見え隠れしている事案でした。

告訴の動機は明らかに言論弾圧です。

本来であれば、名誉毀損なり、業務妨害なりで告訴すべきところでしょうが、記事の内容は全て事実です。下手な告訴は墓穴を掘ります。そこで、表現内容の真実性を問題にしなくても済む、著作権法違反で告訴してきた訳です。

今回の事件では、警察は家宅捜索をしています。逮捕こそされてはいませんが、大勢の警察官が自宅や職場に来て、書類やらパソコンやらを押収しています。一市民にとっては、とてもショッキングな出来事です。

捜査の対象になった人は、私の友人でして、すぐに僕の携帯を鳴らし、私も的確なアドバイスをすることが出来ましたし、友人には、警察を前に毅然とした態度で対応するだけの度胸と胆力がありました。この初動の対応が今回の不起訴処分に繋がっていますが、誰でもこのような対応が出来る訳ではありません。

著作権法の持つ、凶暴な一面を思い知らされた事件でした。このことは、今後、法改正の議論に際し、忘れてはならないと思います。

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福島第1原発:1号機圧力容器に穴 工程表の前提崩れる

福島第1原発:1号機圧力容器に穴 工程表の前提崩れる

東京電力福島第1原発1号機で燃料棒を収めている圧力容器が損傷し、大量の水漏れが起きていることが12日、明らかになった。東電は同日夕、圧力容器の底に合計で数センチ相当の複数の穴が開いている可能性もあるとの見解を示した。17日には同原発事故の収束までの課題を示した新しい工程表を発表するが、現在の工程表で盛り込まれていなかった「圧力容器の破損」という事態に、計画の見直しを迫られることは必至だ。【中西拓司、足立旬子、岡田英】

 先月17日に示された工程表は、6~9カ月以内に原子炉の温度を100度未満の「冷温状態」にすることを目標に、3カ月以内に行う対策の上位に燃料域上部まで格納容器を水で満たす「水棺」の実施を挙げている。燃料のある圧力容器(360立方メートル)に注水し、そこから水をあふれさせて格納容器(7400立方メートル)に冠水させるという手法だ。

 ただし、水棺を実現するためには格納容器とその内部にある圧力容器がいずれも健全な状態であることが前提となる。工程表では、1号機の圧力容器破損の可能性については触れられておらず、格納容器についても「微量の蒸気の漏えい」を指摘しているだけだ。

 東電は燃料を冷やすため、毎日150立方メートルの水を圧力容器に注水し、これまで累計1万立方メートルを入れた。しかし、高さ20メートルある圧力容器の水位は高くても4メートルで、格納容器から漏水していることも指摘されている。

 圧力容器の底には、燃料の核反応を止める制御棒を駆動させるための装置が貫通しており、溶けた燃料の熱で溶接部に穴が開いた可能性がある。注水量と貯水量との比較などから、東電は穴は複数あり、大きさの合計は数センチ程度と推定した。また、大量の水や水蒸気が圧力容器の損傷部から格納容器側に漏れ出し、さらにその水が格納容器につながっている圧力抑制プールやタービン建屋に漏れ出している恐れがある。

 1号機は2、3号機に比べて冷却に向けた準備が最も進んでいた。「モデル」とされた1号機の新たなトラブルは「6~9カ月」とした日程に影響を与えそうだ。

 原子力技術協会の石川迪夫(みちお)・最高顧問は、燃料棒溶融について「冷やされているので(核分裂が連続する)再臨界などの可能性はない」としながら、「燃料棒が溶け落ちたという点では、米国のスリーマイル島原発事故(79年)と同じ状況だ。圧力容器の内部は非常に高温で、溶けた燃料棒は圧力容器の下部でラグビーボールのような形状に変形しているのではないか」とみている。

毎日新聞 2011年5月13日 0時56分(最終更新 5月13日 1時19分)
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圧力容器の底には、元々「穴」が開いています。マスコミが、圧力容器の形状について綺麗に密閉されたフラスコ状のイラストを使うから誤解を招くのだと思います。

福島第一原発は沸騰水型原子炉(BWR)なので、圧力容器の下から制御棒を挿入するため、制御棒を出し入れするための出入り口が底に多数あります。設計上密閉されている筈ではありますが、元々、底には「穴」が開いています。ゆえに、何らかの事故が起きて、圧力容器の底に溶融した燃料棒や内部構造物等の「デブリ」が溜まって高温状態になると水が漏れるのは構造上必然と言えます。

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厚生労働省のパンフレット「妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さんの放射線へのご心配にお答えします。」が非常にミスリーディングな件について

厚生労働省が、放射線を心配する妊婦さんや乳幼児のお母さん向けのパンフレットを作成し、300万部刷って配布するそうです。


妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さんの放射線へのご心配にお答えします。


「放射線の心配にお答えします」という筈が、「水」も「空気」も「食べ物」も国が基準を決めているから安全と繰り返すだけであり、基準の中身にすら触れてません。

食品安全委員会は、「放射性物質に関する緊急とりまとめ」のポイント(「放射性物質に関する緊急とりまとめ」)において、

今回は既に定められている暫定規制値の妥当性について検討したもではなく、今後、リスク管理側において、必要に応じた適切な検討がなされるべきである。

今回は、緊急的なとりまめを行ったものであり、今後、諮問を受けた内容範囲について継続して食品健康影響評価を行う必要がある(p1)。

放射性物質は、遺伝毒性発がん性を示すと考えられ、発がん性に関する詳細な検討及び胎児への影響等について詳細な検討が本来必要であり、今回の検討では、発がん性のリスクについて詳細な検討は行えていない等、さまざまな検討課題が残っている。

さらに、ウラン並びにプルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種についての評価、放射性ヨウ素及びセシウムも含めて遺伝毒性発がん物質としての詳細な評価、各核種の体内動態等に関する検討も必要である(p2)(なお、「放射性物質に関する緊急とりまとめ」本文p27)。

と述べていることからも明らかなように、放射性物質の遺伝毒性発がん性については詳細な評価が出来ないという立場です。今直ちに健康被害が起きないというだけで、将来的に安全と言っているわけではありません。

この点は、 「放射性物質に関する緊急とりまとめ」の図解 を見れば、より一層明らかです。

しかしながら、厚生労働省のパンフレットは安全です、安全ですと連呼しているようなもので、国民を意図的にミスリードしようとするものであると言わざるを得ません。

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出荷自粛サンチュが販売されていた問題を考える

出荷自粛サンチュ、十数社に 千葉の業者「自ら判断」

基準を超える放射性物質が検出され「出荷自粛」とされていた千葉県旭市産の葉物野菜サンチュが、大手スーパー「イオン」(千葉市)のほか、全国の小売店などに出荷されていた。旭市の集荷業者「グリーンファーム」が13日、東京、大阪、三重、広島、島根の各都府県の計十数社に出荷したと明かした。

 グリーンファームの杉藤和夫社長は朝日新聞の取材に、「あくまで自粛で、出荷が禁止されていたわけではない。自分で問題ないと判断した」と説明。一方で出荷先の詳細は明らかにしなかった。枝野幸男官房長官は同日の記者会見で「千葉県に適切な管理をするよう要請した」と述べた。

 出荷先のうち、唯一、記者会見したイオンは、自粛期間に首都圏の57店舗で計約2200パックを販売していたと発表した。販売した「サンチュ(つつみな)」は1パック10枚入りで128円。3月30日から4月7日にかけて東京都と神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、山梨の各県の店舗で販売した。

 グリーンファームから3月29日、「28日の市の独自検査で基準を下回ったので出荷を再開したい」と要請があった。グリーンファームとの取引は20年以上続いているという。イオンは「国や自治体のルールに従うべきだった。お客様にご迷惑、ご心配をかけおわび申し上げる」としている。

 農林水産省は13日、イオンに経緯の説明を求め、出荷自粛品を販売しないよう求めた。イオンは今後、サンチュ購入者に店頭で返品や返金に応じる。

 農水省はまた、小売り・流通の各団体に対しても、出荷停止や自粛をしている農林水産物を仕入れることがないよう周知・徹底を求める通知を出した。また原子力災害対策特別措置法で出荷停止が指示されている福島、茨城、栃木、千葉の各県に、徹底を求める通知も出した。

 旭市産の葉物野菜を巡っては、東京都が3月20日、都内で流通していたシュンギクから基準(1キロあたり2千ベクレル)を超える同4300ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたと発表。旭市は翌21日に葉物野菜の出荷を自粛した。

 千葉県は25日、県の検査でサンチュから同2800ベクレルが検出されたと発表し、29日に同市などに出荷自粛を要請。政府は4月4日になって原子力災害対策特別措置法に基づき出荷停止を指示した。

2011年4月14日3時18分 朝日新聞
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サンチュが安全かどうかではなく、消費者に対する情報公開、説明責任の問題です。消費者問題と言えます。

言うまでもなく、リスクゼロの生活はありえません。生きることは、回避できないリスクとの折り合いをつけることであり、様々な事情を考慮して、そのリスクが許容できるものであるか否かを判断していくしかありません。、

年齢や人生設計に鑑み、この程度ならいい、という判断もあるでしょうし、妊婦や幼児がいるので、控えるという判断もありえます。が、少なくとも「県が販売自粛要請している」という情報は開示しないと判断出来ません。この点について、情報開示を怠ると、被災地、被災地周辺を産地とする農産物全てが「怪しい」ことになってしまいます。

「スーパーで売っている野菜」=「きちんと情報が開示されているもの」という信頼関係が維持されればこそ、敢えて買い控えをしないという消費者の自立的な価値判断と選択が可能になります。消費者からの信頼がなくなったら、消費者は「風評」と「本当のリスク情報」の区別がつかなくなり、リスクを回避するために、買い控えするしかなくなり、生産者は本当の意味での風評被害に遭うことになります。

言うまでもなく、生産者が被害者であることは明らかですが、真の加害者は、被災地の農作物を忌避する消費者ではなく、東電や国であることを忘れてはならないと思います。生産者の被害を填補する責任を消費者に対する情報隠しを行い、不意打ち的なリスクを負わせることにより埋め合わせるべきでないことは、言うまでもありません。

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«「集団的人権論」に対する反駁