福島第1原発:1号機圧力容器に穴 工程表の前提崩れる

福島第1原発:1号機圧力容器に穴 工程表の前提崩れる

東京電力福島第1原発1号機で燃料棒を収めている圧力容器が損傷し、大量の水漏れが起きていることが12日、明らかになった。東電は同日夕、圧力容器の底に合計で数センチ相当の複数の穴が開いている可能性もあるとの見解を示した。17日には同原発事故の収束までの課題を示した新しい工程表を発表するが、現在の工程表で盛り込まれていなかった「圧力容器の破損」という事態に、計画の見直しを迫られることは必至だ。【中西拓司、足立旬子、岡田英】

 先月17日に示された工程表は、6~9カ月以内に原子炉の温度を100度未満の「冷温状態」にすることを目標に、3カ月以内に行う対策の上位に燃料域上部まで格納容器を水で満たす「水棺」の実施を挙げている。燃料のある圧力容器(360立方メートル)に注水し、そこから水をあふれさせて格納容器(7400立方メートル)に冠水させるという手法だ。

 ただし、水棺を実現するためには格納容器とその内部にある圧力容器がいずれも健全な状態であることが前提となる。工程表では、1号機の圧力容器破損の可能性については触れられておらず、格納容器についても「微量の蒸気の漏えい」を指摘しているだけだ。

 東電は燃料を冷やすため、毎日150立方メートルの水を圧力容器に注水し、これまで累計1万立方メートルを入れた。しかし、高さ20メートルある圧力容器の水位は高くても4メートルで、格納容器から漏水していることも指摘されている。

 圧力容器の底には、燃料の核反応を止める制御棒を駆動させるための装置が貫通しており、溶けた燃料の熱で溶接部に穴が開いた可能性がある。注水量と貯水量との比較などから、東電は穴は複数あり、大きさの合計は数センチ程度と推定した。また、大量の水や水蒸気が圧力容器の損傷部から格納容器側に漏れ出し、さらにその水が格納容器につながっている圧力抑制プールやタービン建屋に漏れ出している恐れがある。

 1号機は2、3号機に比べて冷却に向けた準備が最も進んでいた。「モデル」とされた1号機の新たなトラブルは「6~9カ月」とした日程に影響を与えそうだ。

 原子力技術協会の石川迪夫(みちお)・最高顧問は、燃料棒溶融について「冷やされているので(核分裂が連続する)再臨界などの可能性はない」としながら、「燃料棒が溶け落ちたという点では、米国のスリーマイル島原発事故(79年)と同じ状況だ。圧力容器の内部は非常に高温で、溶けた燃料棒は圧力容器の下部でラグビーボールのような形状に変形しているのではないか」とみている。

毎日新聞 2011年5月13日 0時56分(最終更新 5月13日 1時19分)
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圧力容器の底には、元々「穴」が開いています。マスコミが、圧力容器の形状について綺麗に密閉されたフラスコ状のイラストを使うから誤解を招くのだと思います。

福島第一原発は沸騰水型原子炉(BWR)なので、圧力容器の下から制御棒を挿入するため、制御棒を出し入れするための出入り口が底に多数あります。設計上密閉されている筈ではありますが、元々、底には「穴」が開いています。ゆえに、何らかの事故が起きて、圧力容器の底に溶融した燃料棒や内部構造物等の「デブリ」が溜まって高温状態になると水が漏れるのは構造上必然と言えます。

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厚生労働省のパンフレット「妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さんの放射線へのご心配にお答えします。」が非常にミスリーディングな件について

厚生労働省が、放射線を心配する妊婦さんや乳幼児のお母さん向けのパンフレットを作成し、300万部刷って配布するそうです。


妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さんの放射線へのご心配にお答えします。


「放射線の心配にお答えします」という筈が、「水」も「空気」も「食べ物」も国が基準を決めているから安全と繰り返すだけであり、基準の中身にすら触れてません。

食品安全委員会は、「放射性物質に関する緊急とりまとめ」のポイント(「放射性物質に関する緊急とりまとめ」)において、

今回は既に定められている暫定規制値の妥当性について検討したもではなく、今後、リスク管理側において、必要に応じた適切な検討がなされるべきである。

今回は、緊急的なとりまめを行ったものであり、今後、諮問を受けた内容範囲について継続して食品健康影響評価を行う必要がある(p1)。

放射性物質は、遺伝毒性発がん性を示すと考えられ、発がん性に関する詳細な検討及び胎児への影響等について詳細な検討が本来必要であり、今回の検討では、発がん性のリスクについて詳細な検討は行えていない等、さまざまな検討課題が残っている。

さらに、ウラン並びにプルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種についての評価、放射性ヨウ素及びセシウムも含めて遺伝毒性発がん物質としての詳細な評価、各核種の体内動態等に関する検討も必要である(p2)(なお、「放射性物質に関する緊急とりまとめ」本文p27)。

と述べていることからも明らかなように、放射性物質の遺伝毒性発がん性については詳細な評価が出来ないという立場です。今直ちに健康被害が起きないというだけで、将来的に安全と言っているわけではありません。

この点は、 「放射性物質に関する緊急とりまとめ」の図解 を見れば、より一層明らかです。

しかしながら、厚生労働省のパンフレットは安全です、安全ですと連呼しているようなもので、国民を意図的にミスリードしようとするものであると言わざるを得ません。

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出荷自粛サンチュが販売されていた問題を考える

出荷自粛サンチュ、十数社に 千葉の業者「自ら判断」

基準を超える放射性物質が検出され「出荷自粛」とされていた千葉県旭市産の葉物野菜サンチュが、大手スーパー「イオン」(千葉市)のほか、全国の小売店などに出荷されていた。旭市の集荷業者「グリーンファーム」が13日、東京、大阪、三重、広島、島根の各都府県の計十数社に出荷したと明かした。

 グリーンファームの杉藤和夫社長は朝日新聞の取材に、「あくまで自粛で、出荷が禁止されていたわけではない。自分で問題ないと判断した」と説明。一方で出荷先の詳細は明らかにしなかった。枝野幸男官房長官は同日の記者会見で「千葉県に適切な管理をするよう要請した」と述べた。

 出荷先のうち、唯一、記者会見したイオンは、自粛期間に首都圏の57店舗で計約2200パックを販売していたと発表した。販売した「サンチュ(つつみな)」は1パック10枚入りで128円。3月30日から4月7日にかけて東京都と神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、山梨の各県の店舗で販売した。

 グリーンファームから3月29日、「28日の市の独自検査で基準を下回ったので出荷を再開したい」と要請があった。グリーンファームとの取引は20年以上続いているという。イオンは「国や自治体のルールに従うべきだった。お客様にご迷惑、ご心配をかけおわび申し上げる」としている。

 農林水産省は13日、イオンに経緯の説明を求め、出荷自粛品を販売しないよう求めた。イオンは今後、サンチュ購入者に店頭で返品や返金に応じる。

 農水省はまた、小売り・流通の各団体に対しても、出荷停止や自粛をしている農林水産物を仕入れることがないよう周知・徹底を求める通知を出した。また原子力災害対策特別措置法で出荷停止が指示されている福島、茨城、栃木、千葉の各県に、徹底を求める通知も出した。

 旭市産の葉物野菜を巡っては、東京都が3月20日、都内で流通していたシュンギクから基準(1キロあたり2千ベクレル)を超える同4300ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたと発表。旭市は翌21日に葉物野菜の出荷を自粛した。

 千葉県は25日、県の検査でサンチュから同2800ベクレルが検出されたと発表し、29日に同市などに出荷自粛を要請。政府は4月4日になって原子力災害対策特別措置法に基づき出荷停止を指示した。

2011年4月14日3時18分 朝日新聞
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サンチュが安全かどうかではなく、消費者に対する情報公開、説明責任の問題です。消費者問題と言えます。

言うまでもなく、リスクゼロの生活はありえません。生きることは、回避できないリスクとの折り合いをつけることであり、様々な事情を考慮して、そのリスクが許容できるものであるか否かを判断していくしかありません。、

年齢や人生設計に鑑み、この程度ならいい、という判断もあるでしょうし、妊婦や幼児がいるので、控えるという判断もありえます。が、少なくとも「県が販売自粛要請している」という情報は開示しないと判断出来ません。この点について、情報開示を怠ると、被災地、被災地周辺を産地とする農産物全てが「怪しい」ことになってしまいます。

「スーパーで売っている野菜」=「きちんと情報が開示されているもの」という信頼関係が維持されればこそ、敢えて買い控えをしないという消費者の自立的な価値判断と選択が可能になります。消費者からの信頼がなくなったら、消費者は「風評」と「本当のリスク情報」の区別がつかなくなり、リスクを回避するために、買い控えするしかなくなり、生産者は本当の意味での風評被害に遭うことになります。

言うまでもなく、生産者が被害者であることは明らかですが、真の加害者は、被災地の農作物を忌避する消費者ではなく、東電や国であることを忘れてはならないと思います。生産者の被害を填補する責任を消費者に対する情報隠しを行い、不意打ち的なリスクを負わせることにより埋め合わせるべきでないことは、言うまでもありません。

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「集団的人権論」に対する反駁

特定人を名宛人としない性的な表現物が子どもや女性等の人権を侵害するという議論(?)をされている方々がいます。これを「集団的人権論」と仮に呼ぶことにします。実際には、人権でも何でもなく、自分達が好ましくないものを弾圧する口実として「人権」概念を用いているだけの屁理屈ですが、説得力があると誤解してしまう人が出ても困ります。


以下、「女性」を例にとって集団的人権論に対する反駁を行います。「女性」のところは、「子ども」に置き換えても、大体話は通じます。性的な表現物ではなく、いわゆる差別発言、ヘイトスピーチ等に対する規制を求める議論に対する反駁としても使える議論です。

なお、差別発言、ヘイトスピーチ等への法的な評価に関する私の見解は以下の過去記事を御参照下さい。


石原知事「ババァ」発言、女性たちの賠償請求棄却

【石原慎太郎】姜尚中氏の福岡応援に石原知事反発 「怪しげな外国人」【問題発言】

イスラムの預言者風刺漫画とホロコースト風刺漫画


日本国憲法第13条に「個人として尊重」とあるように、個人の尊厳こそが人権の根拠とされており、人権概念の根底にあるのは、自己決定権です。「集団的な人権」という概念は、自己決定権を基調とする日本国憲法の人権概念とは相容れないものです。我が国における人権制約の唯一の根拠は、「公共の福祉」ですが、これは人権と人権が衝突する場合の調整原理です。「集団的な人権」という概念が認められない以上、表現の自由と対立する人権が存在しないというべきであり、「集団的な人権」の「侵害」なるものは、表現の自由を「法的」に制約すべき根拠とはなりえないというべきです。

ポイントは「法的」にということです。表現に対する評価は当然自由に行われるべきものであり、批判、議論の対象とする自由は当然にあります。また、政治的な責任の追及も当然にありえるでしょう。しかしながら、「法的」な責任を負わせる根拠にはならないし、「法的」に表現の自由を制約することの根拠とはなりえないのです。


理念的な問題はさておいても、表現の自由に対する法的な制約の根拠となりうる「女性の集団的な人権」という概念を認め、「女性の集団的な人権」の侵害を根拠とする表現の自由の制約を認めることは、以下の通り、著しく表現の自由を制約する結果を生じせしめますが、これは、また、この規制を盛り込むのは『北京宣言行動綱領 第Ⅳ章 戦略目標及び行動』に記載されている「表現の自由に矛盾しない範囲」文言に反し(http://www.gender.go.jp/kodo/chapter4-J.html)、また、日本国憲法第21条に反するものです。


第一に、特定の個人を名宛人としない表現行為には具体的な被害者がいない以上、「集団的な人権」が侵害されたか否か、どの程度侵害されたかは、公権力が恣意的に判断することが可能になります。謂わば、公権力に表現内容の是非を判断させる自由裁量権を付与するに等しい結果となります。実際には、具体的な人権侵害を離れた、「~の尊厳に対する罪」のようなものになり、戦前の不敬罪に類似した規制となってしまいます。

第二に、「集団」に属する個人の自己決定権を無視することになります。「集団的な人権」が侵害されたか否かを判断するのは誰なのでしょうか?表現をどのように受け止めるかは、最終的には個々人の問題です。人の感性がさまざまである以上、ある種の表現について差別的と受け止める女性もいるでしょうし、あるいは、問題ないと受け止める女性もいるでしょう。全ての女性に意見を聞くのでしょうか?全ての女性の意見を聞くことは現実的ではない以上、「集団的な人権」が侵害されたか否かの判断は公権力が行うことになります。その際には、規制に反対する当該表現は問題ないと考える女性の自己決定(意思)は無視される結果になります。「集団的な人権」により、「個々の女性の人権」が制約されることは明らかに不当な結論です。特に、漫画やゲーム等のサブカルチャーと言われるジャンルにおいては、数多くの女性クリエイターが活躍しており、今回の議論において規制が想定されているジャンルもまた例外ではないことも、看過されるべきではありません。

第三に、「女性の集団的な人権」という概念を認め、「女性の集団的な人権」の侵害を根拠とする表現の自由の制約を認めることは、非常に安易な「表現狩り」につながりかねず、却って問題の所在を不明確にする危険性が強いと言えます。差別を論じるためには、差別的な表現を避けて通ることは出来ないことは言うまでもありません。

第四に、表現の自由に対する法的な制約の根拠となりうる「集団的な人権」という概念を認めてしまうと、「集団的な人権」の対象となる集団が際限なく広がってしまいます。例えば、「イスラム教徒」の「集団的な人権」を守るために、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺等をする表現を規制したり、あるいは、「ユダヤ人」の「集団的な人権」を守るために、ホロコースト否定論を規制したりすることも可能になりますし(なお、私はホロコースト否定論者ではありませんし、ホロコースト否定論を初めとする歴史修正主義については批判的な立場であることを付言します。)、国松元警察庁長官銃撃事件が公訴時効にかかった後の警視庁の「言い訳」は、「オウム真理教信者」の「集団的な人権」を侵害することにもなるでしょう。むしろ、「集団的な人権」という考え方を推し進めるのであれば、特定の集団を特別扱いしないという「平等」の観点からは、「イスラム教徒」、「ユダヤ人」、「オウム真理教」等々の「集団的な人権」を認めるという方向性に行くのではないかと思います。表現の自由は画餅となることは明らかです。

第五に、「集団的な人権」に対する侵害を根拠とする表現の自由に対する法的な制約を認めてしまうと、特定の「集団」が自らに対する批判を封殺するための手段として、刑事手続きや訴訟制度を悪用する可能性があります。例えば、ある企業ないし団体の構成員が、自らの所属する集団に対する批判を封殺するために、個々の構成員が原告となって一斉に全国で訴訟提起するようなことが考えられます。実際、「幸福の科学」という宗教団体の信者らが、「幸福の科学」に対する批判的な記事を掲載した出版社に対し、訴訟を提起しているという事件が過去にあります。


以上のとおり、「集団的な人権」に対する侵害を根拠とする表現の自由に対する法的な制約を認めることは、とりもなおさず、個々の人権を軽視することに繋がりかねないだけではなく、特定の集団による恣意的な言論弾圧を正当化するために使われる危険性があるのです。

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ハヤシファンド被害対策弁護団を立ち上げました

ハヤシファンド被害対策弁護団を立ち上げました。

「ハヤシファンド」、「エンジェルファンド」、「トップファンド」による被害を受けられた方は御一読下さい。

事案は、高配当を喧伝して集めた資金を不明朗に流出させて投資家の預け金を毀損したという事案ですが、金融商品取引法上の登録業者が勧誘をしていた「ファンド」においてさえ、投資金の管理が適正になされていない事態が多発している現在の我が国の投資環境を象徴するような事件であるといえます。

1月5日の朝日新聞の記事にあるとおり、この種の問題は最近多発しており、「形式的に問題のある業者は排除できるが、登録後の業務の信用性までは保証できない」という金融庁担当者のコメントが現状を物語っています。

弁護団への参加申込手続の期限は、平成23年1月末日(必着)となっております。

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実在児童の人権擁護基金を作りました

実在児童の人権擁護基金を作りました。

詳しくは、リンク先のブログ 実在児童の人権擁護基金のブログ をご参照ください。

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「ハヤシファンド」,「エンジェルファンド」,「トップファンド」などについて被害回復手続を検討している方々へ

「ハヤシファンド」,「エンジェルファンド」,「トップファンド」などについて被害回復手続を検討している方々へ

ご関心のある方はどうぞ。

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【12月3日(金)午後1時】「東京都青少年健全育成条例改正を考える会」が記者会見を行います。

日時:2010年12月3日(金)

時間:午後1時~

場所:東京都庁記者クラブ(都庁第1庁舎6F)

テーマ:「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例案」の問題点について

主催:「東京都青少年健全育成条例改正を考える会」
(共同代表:藤本由香里(明治大学准教授)・山口貴士(弁護士・リンク総合法律事務所))

<登壇者>
河合幹雄(桐蔭横浜大学法学部法律学科教授)
呉智英(評論家・日本マンガ学会会長)
こうの史代(マンガ家)
高沼英樹(出版倫理協議会委員)
竹宮惠子(マンガ家、京都精華大学マンガ学部学部長)
西谷隆行(児童と表現のあり方検討委員会委員)
山田健太(日本ペンクラブ 言論表現委員会・委員長)
山中 恒(児童文学者)
藤本由香里(明治大学教授准教授)
山口貴士(弁護士・リンク総合法律事務所)

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第7条第2号から見える「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」の問題点

第156号議案「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」の条文のうち、一番、「基本」になっているのが、第7条第2号という条文です。この条文の意味をつらつらと考えているうちに、幾つかの疑問が湧いてきました。

第七条 図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催する者及び興行場(興行場法(昭和二十三年法律 第百三十七号)第一条の興行場をいう。以下同じ。)を経営する者は、図書類又は映画等の内容が、青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自 殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがある次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販 売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は観覧させないように努めなければならない。

一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

二 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

(平四条例一九・平一三条例三〇・一部改正)


(1)第7条第1号の

「青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」

という条文はそのまま残されています。また、第1号の条文に含まれるものであれば、改めて規制対象を拡大する必要もない筈です。である以上、追加予定の第2号の

「漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」

は、第7条第1号の

「青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」

には該当しないということになります。

つまり、東京都の提案した改正案を前提としても、第7条第2号規定に該当する表現である

「漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」

は、
① 性的感情を刺激せず、
② 残虐性を助長せず、
③ 自殺若しくは犯罪を誘発しない

表現、すなわち、問題のない表現ということになります。このように、第7条第2号の存在それ自体、今回の条例改正が不要であることを明らかにしていると言えます。

(2)「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」を考えているうちに、疑問が湧いてきました。「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」は要するに犯罪ということです。

現行法を基準にして考えた場合、「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」には、強姦、強制わいせつ、売春、児童買春、淫行条例違反、児童福祉法違反の「性交若しくは性交類似行為」が含まれることになります。

しかしながら、刑罰法規には、時間的な制約と場所的な制約があります。

(時間的な制約)
⇒刑罰法規の施行時以前に遡及することは出来ない

(場所的な制約)
⇒法律:基本的に日本国の主権が及ぶ範囲にしか及ばない(国外犯処罰等は考えず、敢えて、大雑把に論じています。)
⇒条例:当該自治体にしか及ばない

時間的な制約という観点から考えると、過去の時代について描いた場合はどうなるのでしょうか?

例えば、江戸時代では、売買春は合法ですし、性交の最低年齢も決まっていません。領主の初夜権等もあったでしょうし、そもそも、権力者に逆らうこと自体が許されない時代、あるいは、奴隷制度が存在する時代もあります。そのような時代には、被支配者や奴隷に対し性行為を強要しても何ら違法性の問題は生じないでしょう。

直近の例を挙げます。東京都には、いわゆる淫行規定は2005年6月まで存在しませんでした。長野県には今でも淫行規定はありません(長野県内の自治体独自のものはある)。

場所的な制約との関係で言えば、国ごとに法律は異なります。自治体ごとに条例は異なります。

例えば、東京都の淫行規定は青少年を処罰の対象にはしません。他の都道府県には青少年をも処罰の対象にするものもあります。なお、処罰の対象となるならないにかかわらず、「刑罰法規に触れる」と解釈する余地もあります。

創作物であれば、時代・場所の設定は自由ですし、架空の時代、そもそも、全く価値基準の異なる世界を舞台とする場合もあるでしょう。このような創作物について、現在の刑罰法規を基準として、規制の対象とすることは、ナンセンスという他はありません。

(3)前にも述べたとおり、「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為」は要するに犯罪ということです。しかしながら、犯罪を犯すことと、「犯罪について表現すること」は違います。「犯罪について表現すること」を規制の論拠にすることは、危険な一線を越えることになります。

暴力、薬物、組織犯罪等、何でも規制の対象となることを可能にする危険な先例を造ってはいけません。

「非実在犯罪」規制はいらないのです。

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「『非実在青少年規制』改メ『非実在犯罪規制』へ、都条例改正案の問題点は払拭されたのか?」

<参加人数についての公式発表>
「『非実在青少年規制』改メ『非実在犯罪規制』へ、都条例改正案の問題点は払拭されたのか?」
に足を運んで頂いた人数 ⇒ 約1500人
会場に入れた人数 ⇒ 約850人(中に入れなかった650人の方申し訳ありませんでした)
ニコニコ動画視聴者数 ⇒ 約7万3000人

ニコニコ動画による生中継もあります。

「『非実在青少年規制』改メ『非実在犯罪規制』へ、都条例改正案の問題点は払拭されたのか?」

主催:「東京都青少年健全育成条例改正を考える会」
<共同代表:藤本由香里(明治大学准教授)・山口貴士(弁護士・リンク総合法律事務所)>
東京都千代田区麹町4丁目2番地第2麹町ビル2階
リンク総合法律事務所内
tel: 03-3515-6681 fax: 03-3515-6682
yama_ben@nifty.com
協力:「コンテンツ文化研究会」

参加費:無料
事前申し込み:不要
取材の方:受付にて登録をお願いします。

2010年12月6日(月)
18:30(開場) 19:00(開演) 21:15(終了)

中野ZERO小ホール(JR/東西線中野駅南口から徒歩8分)

集会の告知資料

プレスリリース

<パネリスト予定者>

兼光ダニエル真(翻訳家)
河合幹雄(桐蔭横浜大学法学部教授・法社会学者)
呉智英(評論家・日本マンガ学会会長)
近藤ようこ(マンガ家)
とりみき(マンガ家)
西谷隆行(日本雑誌協会・編集倫理委員会委員)
保坂展人(前衆議院議員・ジャーナリスト)
水戸 泉/小林来夏(作家)
山本弘(作家)
藤本由香里(明治大学准教授)
山口貴士(弁護士・リンク総合法律事務所)

その他、登壇者鋭意交渉中!

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«第156号議案「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」の条文の検討