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カスパル代表 近藤美津枝氏の発言から表現の自由を考える②

児童ポルノ法の改正に際し、「アニメ」や「マンガ」をも規制対象にすべかという論点を巡り、この点については相当つっこんだ議論がなされているのですが、新たに規制の必要性を主張している割には、これまでの議論について相当無知なようです。
近藤氏の主張は新しいものではなく、これまでにも何度となく主張されてきては、その都度論破されている、非常に「古臭い」主張です。

特に、気になるのは、規制の根拠として、「(「アニメや漫画の少女に基本的人権があるのでしょうか?」という問いに答えて)絵で描かれていても、少女たちの人権を侵していることには違いありません。)」と臆面も恥ずかしげもなく、「2次元キャラクター人権享有主体説」を開陳しておられることです。

この点に関する私の反論と主張については、私が理事を務めるNGO団体AMIが、2003年6月23日に発表した「『児童買春児童ポルノ禁止法』改正への要望書」をご参照頂きたいと思います。おそらく、この問題に関しては最も整理されている文章の一つではないかと自負しております。

特に、「2次元キャラクター人権享有主体説」については、要望書の中において、わざわざ「2 「フィクション」と「実在児童への虐待」の区別」という独立項目まで設けており、また、「5 私たちからの提案」においても反論を行っています。

ちなみに、近藤さんと同じ団体にご所属の「佐伯有美」さんは、その「鼻炎と夫婦仲に悩む さいきゆみ どじ日記2」において、
「ギャルゲの少女を陵辱しているのは、少女の人権を無視した行為だというのに、キャラクターに人権はないと言うてきた。こういうのをお宅の詭弁っていうねん。…(中略)…あなたがそういうメールしているのが全世界の笑いものになっている事実を認識されては?本名も名乗らないで 偉そうに物を言い、陰で悪口言い合っているのなら、あなたも本名であなたの考えを新聞に投稿されては?正々堂々とあなたの考えをテレビで顔を出して言ってみてください…(中略)…)それしたら、ちーとは話をする気にもなるぞ。」

とお書きになっており、どうしても、規制反対派の主張を表立って堂々と主張は出来ない代物であると決め付けたいようですが、実際には、NGO団体AMIは、Web上に堂々と意見書を公表し、また、国会議員の先生方などにも意見書の送付を行っています。
さらに言えば、AMIは、2001年12月18日に開催された「第二回・子どもの性的商業的搾取に反対する世界会議」(以下、横浜世界会議)において、「漫画はCSEC(子どもの性的商業的搾取)ではない」というワークショップを行い、多くの参加者から賛同を得ています。
私自身も、雑誌や新聞などのメディアにおいて、弁護士として同様の発言を繰り返しています。

佐伯有美氏がそのような発言をされること自体、一連の議論の流れについてあまりにも「無知」であることの証左であると思います。

他にも近藤氏の主張には問題点があります。例えば、近藤氏は、
「私たちは5、6年前から資料集めに取り組んできましたが、いわゆる『美少女アダルトアニメ雑誌』や『美少女アダルトアニメシミュレーションゲーム』は、それはひどい。大人の男性が幼い少女を操って、性欲を満たす奴隷に仕上げていくような内容が多くて、ランドセルを背負うなど具体的なイメージで小学生の少女を描いてある。それがコンビニなどで売られ、子どもでも見たり、買ったりできる。こうして育った青少年は人間性を失い、女性を物としか見なくなる。最近の相次ぐ事件を見ても、少女にとってすごく危険な社会になってしまったことが分かります」

と自信たっぷりに発言されておりますが、実際には、少年による性犯罪(=強姦又は強制わいせつ(いずれも致死傷罪を含む。)と定義します)の動向についてみると、検察庁における少年による性犯罪被疑事件の受理人員の合計は、昭和49年まで2000人を超えていましたが、その後は減少傾向が続き、昭和55年に1571人、平成2年に743人まで減少して以降は、570人から840人までの間で増減を繰り返して、平成14年には568人となっています(数値は各年度版犯罪白書に引用されている検察統計年報によります)。
アダルトアニメやゲームの普及についてのデータはありませんが、アダルトアニメやゲームの普及と性犯罪発生率の相関をとったら、明らかに負の相関がありそうです。なんでもアダルトアニメやゲームは青少年に対して、大きな影響があるそうですが、アダルトアニメやゲームが性犯罪の発生に影響を与えるという論理を真とすれば、アダルトアニメやゲームの普及は、むしろ性犯罪の発生を抑止する、という結論以外は導き出せそうにありません。

ちなみに、2003年11月4日の(東京都)青少年育成問題協議会の席上において、渡邉晃氏(警視庁前生活安全部長)は「それ(不健全図書のこと)が原因で直接犯罪を敢行したという数字はでていない」「性情報の氾濫と青少年の性犯罪の増加について因果関係を学術的に証明したケースはない」との答弁をしておられた筈です(傍聴人からの伝聞)。

 僕にいわせれば、近藤氏や佐伯氏に代表されるような、「アニメ・ゲーム=児童の人権侵害論者」は、本当に児童の人権のことを考えていると発言する資格はないと思います。資源も時間も有限です。客観的なデータに基づく事実分析をしない限り、効率的かつ効果的な児童の救済が出来る筈はないからです。
 分かりやすい「敵」について根拠の薄い感情的な発言を連呼して、児童の人権救済に貢献したつもりになっている、「アニメ・ゲーム=児童の人権侵害論者」は、精神的な自慰行為をしていると言っても過言ではないと思います。
 あるいは、子どもをダシにして自分の嫌いなものに「悪」のレッテルを貼ろうとしていると言われてもしかたがないと思います。

ご参考までに↓


(今回のオタクバッシングに関する総合的なサイト)
http://www.geocities.jp/houdou_higai/

(僕が理事を務めるNGO連絡網AMIのサイト)
→大谷昭宏氏に公開質問状を送りました!
http://www.picnic.to/~ami/

弁護士 山口 貴士@東京弁護士会

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Comments

 山口先生、こちらでははじめまして。克森淳です。

 老婆心ながら申し上げます、カスパルに所属しているのは佐伯「有美」さんです。佐伯氏のような方は、こういうところから揚げ足取りそうなタイプと見受けられるので…。

Posted by: 克森淳 | January 20, 2005 at 11:55 PM

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