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松文館事件判決速報

主文:原判決を破棄する。被告人を罰金150万円に処する。

(第1震判決 懲役1年 執行猶予3年)

懲役刑から罰金刑に減刑されました。

(憲法違反の論点)
刑法175条は、憲法21条に反しない。
仮に、知る権利を侵害する結果となっても知る権利を侵害しない。
憲法31条の明確性の原則に反しない。
「蜜室」のわいせつ性を警視庁が判断した過程に問題はない。

(刑法175条違反の判断について)
四畳半判決の基準は、文書だけではなく、絵にも適用できる。
わいせつの判断基準を変更するべき理由はない。
裁判所によるわいせつの基準となる社会通念の判断は規範的な判断であるが、その判断に際し、社会における性的な出版物の流通状況を考慮することは許される。

マンガの性的刺激は一般的には実写より弱い。しかしながら、本件マンガ本には具体的かつ詳細に性交性戯場面を描写しており、「わいせつ」である。

一定の思想や意識を読み取ることは困難であるから、性的刺激を緩和するようなものではない。
思想性・芸術性の判断要素について初めて判示した。

(故意の認識について)
警察における取調べの際の調書にしたがって、「わいせつ」性の認識を認めた。
警察における取調べの実情を反映していない判決である。

(ゾーニングについて)
ビニール梱包、成年コミックとの表示をしていたことについては、一定の評価をしつつも、判断には影響しない。

(量刑について)
わいせつ性の程度も量刑要素として考慮すべき。
「蜜室」のわいせつ性は、実写表現と比べると弱い。

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子ども守る条例の要旨公開 奈良県警、ホームページで

子ども守る条例の要旨公開 奈良県警、ホームページで

 「子どもを犯罪の被害から守る条例」(仮称)制定を進めている奈良県警は15日、条例案要旨をホームページで公開した。
 昨年奈良市で起きた女児誘拐殺人事件を受け、子どもに対するわいせつや連れ去りを未然に防ごうと、県とともに検討してきた。県民の意見や質問も公開し、条例への理解を求めている。
 13歳未満の子どもを使ったポルノの所持や、公共の場所で子どもに言い掛かりをつけたり、つきまとったりするなどの行為を禁止。悪質違反者は30万円以下の罰金などを課す。法務省などによると、こうした行為やポルノの所持禁止の規定は全国初という。
 発見者による警察や保護者への通報も義務付ける。
(共同通信)
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この条例、特に、「子どもポルノ」の単純所持の禁止には大いに疑問を感じます。

「単純所持」が規制対象となった場合、国民への過度のプライバシー侵害(私領域への介入)、冤罪の多発が懸念され、その懸念は、国際的にも共有されているものですし、今回の児童ポルノ法改定(第)においても罰則は設けられてはいません。
 また、『サイバー犯罪条約』では、児童ポルノの単純所持に関する条項について批准を留保することを認めています。『子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する子どもの権利条約の選択議定書』では単純所持の規制について、まったく言及していません。

これらの懸念を考慮せず、一自治体の判断のみで条例化を進める姿勢には大いなる疑問を感じます。

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「日本版ラスベガス」も ゲームや格闘技の議連発足へ

「日本版ラスベガス」も ゲームや格闘技の議連発足へ

テレビゲームやアニメ、格闘技など、日本が得意とする「お家芸」の振興を図ろうと、民主党の国会議員が近くふたつの議員連盟を相次いで発足させる。「ゲーム・キャラクター・デジタルコンテンツ議連」と「格闘技振興議連」。双方の発起人の樽井良和衆院議員は「経済効果はとても高いのに、永田町ではほとんど知られていない。国の産業として育成していきたい」と意気込む。

 デジタルコンテンツ議連には、枝野幸男前政調会長ら34人が名を連ねる。国内のゲームソフト会社やゲーム機でつくる「コンピュータエンターテインメント協会」(CESA)とも連携。「ポケモン」や「ガンダム」など海外でも人気の高いキャラクターを使ったテーマパークや、映画制作の専門学校などを集めた「日本版ラスベガス」の建設を検討する。

 一方、格闘技振興議連には33人が参加、野田佳彦元国対委員長が会長を務める予定。空手や柔道、相撲をはじめ、日本発祥の総合格闘技「PRIDE(プライド)」の歴史や人物を紹介する博物館づくりを構想している。

 いずれの議連も近く発足総会を開き、自民党など他党にも参加を呼びかける。(朝日新聞)
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メディア産業に、永田町の好意的な目が向いたのはいい機会だと思います。
しかしながら、反面、「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」の第6条第2項には「コンテンツ制作等を行う者は、そのコンテンツ制作等に当たっては、コンテンツが青少年等に及ぼす影響について十分配慮するよう努めるものとする。 」という文言があり、果たして、これまで、僕やAMIが取り組んできた表現規制活動にとって、全面的に喜ばしいことかどうかは疑問です。

近年の、「アニメ、マンガ、ゲームに対するバッシング」に対する背景には、「商品として認めつつも、文化としては認めたくはない」という非常にアンビバレントな心理があると思われますが、公権力による支援が自由な創作活動に対する介入の口実にされないように注意と監視が必要だと思います。

優れたな表現は、タブーのない自由な創作環境により支えられる幅広い「裾野」が必要であること、表現を「いい表現」と「悪い表現」に分類する二元論的な思考が「作品を殺す」ことをこれまで以上に訴え続けることが必要であると思います。

国会議員の先生方や霞ヶ関の官僚には、ちばてつや先生の表現の自由について語る名作「~と、ボクは思います!」及び僕が主任弁護人をしている「松文館裁判」の東京高等裁判所におけるちばてつや先生のご証言を是非ともよくお読み頂きたいと思います。


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