【唖然】誕生日、最終学歴…内閣府が人事資料で非公表に
内閣府は、幹部職員の人事に関する報道機関向け発表資料に関し、これまで公表していた生まれた月日、最終学歴、本籍地、公務員採用試験区分を非公表とすることを決め、26日に発表した政策統括官の人事資料に適用した。
内閣府は「行政機関個人情報保護法に基づく対応だ。公表すれば、本人の利益を侵害するおそれがある」と説明している。これに対し、内閣記者会は同日、「個人情報保護を理由に、一方的に公表内容を削除したのは極めて遺憾だ」とし、従来通りの公表を求める申し入れ書を内田俊一内閣広報官あてに提出した。
4月に全面施行された行政機関個人情報保護法の第8条は、「行政機関の長は、利用目的以外の目的のために保有個人情報を利用し、または提供してはならない」と定めている。
内閣府の松山健士人事課長は、生年月日などの個人情報は「定年などの人事管理が利用目的だ」とし、報道を通じて国民に提供することは目的外の利用に当たると説明している。
こうした対応は、同法の全面施行を受けて府内で協議し、江利川毅次官の了解を得たとしている。ただ、新たな対応を明文化したり、公表したりはしていなかった。また、同法は本人の同意がある場合は情報提供を認めているが、職員に意思確認はしていないという。
報道機関向け人事発表資料の内容は、各省庁がそれぞれ判断している。ほとんどの省庁が生年月日や学歴を公表しているが、文部科学省などは同法施行を機に、本籍地は非公開とする方針を決めている。外務省や防衛庁は、職員の了解を得てすべてを公表している。
細田官房長官は26日の記者会見で、「政府として、共通にすべきかどうかとの議論は行っていない。内閣府限りで、判断したかと思う」との認識を示した。その上で、「本来、(報道のために)必要な情報を超え、個人情報に当たる可能性があると思ったようだ。担当(部署)が判断した」と述べた。同時に、「(今回の対応は)試みだ。(公表基準の見直しも)あるかもしれない」と語った。
(読売新聞)
「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」第8条第1項は、「行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。」と定めています。
内閣府は、今回、非公表とされた情報について、人事管理が利用目的であり報道を通じて国民に提供することは
目的外利用に当たるという態度を取っているようですが、これは憲法21条の保障している国民の知る権利について、下位規範である法律の規定を奇果として制約しようとするもので、このような運用は憲法違反の可能性が強いと言わざるを得ません。
確かに、公務員の個人の住所、病歴などについては、公務員であろうと一介の私人であろうと保護されるべき個人情報ないしプライバシーに属しますから、公開しないことは当然ですが、一方で公務員は、公の権力の行使に関与する「全体の奉仕者」(憲法15条2項)であり、公務員の選定・罷免の権利は、国民固有の権利(憲法15条1項)である以上、その個人情報の保護、プライバシーの保護についても自ずから一定の制約があることは当然です。
特に、公権力の意思決定に関与する一定の地位以上の公務員については、国民がその固有の権利である選定・罷免の権利を適正に行使できるよう、情報が開示されることが重要です。
例えば、いわゆるキャリア官僚候補である国家公務員Ⅰ種の合格者については、出身大学による学閥が問題とされてきましたし、また、キャリアとノンキャリアによる人事処遇の差も問題となり議論がされてきました。今回、このような内閣府の決定が定着すれば、国民は議論のための材料すら入手できなくなります。
また、法令上、官公庁の活動目的の中に「報道を通じて国民に提供すること」が明示的に規定されていることは殆どない筈ですから(多分ないと思いますが、確認できていません。)、内閣府の論理を用いれば、如何なる情報であっても国民の目から隠すことが可能になってしまいます。
内閣府は速やかにかかる措置を撤回すると共に、国民の知る権利を阻害しないよう、個人情報保護の関連法令の速やかに見直しを行うべきであると考えます。