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【続々】小泉首相の靖国参拝はやっぱり違憲でしょう

【続】小泉首相の靖国参拝はやっぱり違憲でしょう」の続きです。

私は、「【論点整理】小泉首相の靖国参拝はやっぱり違憲でしょう」の分類に従えば、

 靖国参拝違憲派かつ大阪高裁判決支持派

ということになりますが、基本的には、「味方」である筈の人達にも今回、「国が上告をしなかったこと」について、大分誤解があるようなので、指摘することにします。

以下、誤解の典型例として thessalonike2さんの「世に倦む日日」を具体例に説明したいと思います。

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さて、二点目の問題は「上告が可能か否か」の問題だが、前に民事訴訟法の第312条で示したとおり、判決の憲法判断を不服として上告する権利は原告被告双方に認められている。政府はその権利を行使せず上告を断念する決定をした。上告を断念した時点で高裁判決を受け入れる意思決定をしたということであり、すなわち大阪高裁の違憲判決を認めたということである。上告しても「上訴の利益」論で上告が棄却されるからという理由づけは、単に上告断念と違憲判決容認の意義を希釈する方便にすぎない。もし最高裁が「上訴の利益」論で政府の上告を棄却したとすれば、そのときは、法務大臣なり官房長官が最高裁を非難する政府談話を発表すればよいのだ。最高裁判所は憲法判断をする司法責任を持った裁判所である。最高裁が「憲法の番人」であることは中学3年の公民で習う社会の常識である。「上訴の利益」論で姑息に憲法判断を回避する最高裁の無責任な態度こそ問題なのだ。
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法曹界の人間自身が国に憲法を守らせるべく行動しなければならないはずだ。誰もそれをしないから、一般市民が勘違いをして「上告はできないはずだ」とメールを寄越してくる。「事実上不可能」と「法的に不可能」とは違う。政府は上告できた。政治的理由で仕方なく断念しただけだ。
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と、悲憤慷慨、威勢よくのたもうて居られます。

しかしながら、「法曹界の人間自身が国に憲法を守らせるべく行動しなければならないはずだ。」という点は、少なくとも、今回の大阪高裁判決を勝ち取った弁護団の方々を初め、これまでの靖国訴訟に関わってきた弁護士に対し非常に失礼な表現です。

次に、原告が請求棄却で勝訴している場合に、理由中の判断への不服を理由として上訴(控訴、上告)することが出来ないことは、昭和31年4月3日最高裁判決が確定判例として存在します。

最高裁判決に拘束される国の立場としては、最高裁判例を無視して敢えて不適法な上告を行うことは出来ないでしょう。
なお、仮に、上告したとしても、明らかに不適法な上告として、大阪高等裁判所により却下されてしまうことは確実です(民事訴訟法316条1項1号)。

thessalonike2さんの論法は、非礼な上に、「国は大阪高裁判決を受け入れよ。」と大阪高裁判決の政府に対する拘束力を強調する一方で、「最高裁判決を無視しても上告せよ。」というダブルスタンダード的な主張という他はありません。
このような、ダブルスタンダード的な主張をされると、靖国参拝違憲論、そして、今回の大阪高裁判決の意義そのものの信頼性、価値が損なわれかねないと思います。

初歩的な知識を踏まえないトンチンカンな反論をした上で、「ネット右翼の無知蒙昧を諭し、最低限の法律知識を啓蒙してやるべきなのだろう」と息巻かれても、thessalonike2さんの言われるところの「ネット右翼」の方々に攻撃の口実を与えてしまう上に、私を初めとする靖国参拝を違憲と考える法曹関係者もthessalonike2さんの立場を擁護することすら不可能になってしまい、正直な話、困ってしまうのです。

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Comments

コメント欄を開放している風通しのいいブログと引きこもり夢想ブログでは、その主義主張が如何なるものであるにせよ、前者にひとは靡くものと考えます。

Posted by: 道理 | October 25, 2005 07:06 PM

一連の論考にざっと目を通させて頂きました。論点がわかりやすく、非法曹のものにはたいへん勉強になります。
 ところで、法や判例などに基づけば「違憲の可能性が高い」という立場をとられているようですが、市井で商人として生きてる私には、慰霊追悼に関する問題を、政教分離原則という法の世界の規準だけで律してしまうことについて、正直いささかの疑問を禁じ得ません。憲法や法も、自律的に自己目的的に存在するのではなく「目的があって」立法されたのではないでしょうか?私達の社会(生活)において、何に価値を置き、それをどう守っていくか、という観点から法の趣旨や解釈に思いを巡らせる時、法の理論を如何に整えて厳密・仔細に分析して、違憲か合憲かの結論を導いたとしても、それは机上の正当性として肯ずることは出来ても、生活者の感覚として腑に落ちないことが少なく無いのです。
 町のご祭礼で補助金を出したり、祭祀の歴史的文化的な価値のために行政が支援を行うことなど、世界の多くの国でも日本の地方でも、これらに対して「政教分離」と言い募れば、立ち行かなくなる虞れも否定できません。政教分離原則を守るのか、文化を大切にするのか、という選択になったとき、そもそも政教分離の必要性とはどういう歴史的経緯から生じてきたか、と改めてその意味や目的を考える必要性に迫られます。
 今回の靖国参拝について「政治的」と表現されていらっしゃいますが、私はむしろ主に「儀礼的」行為と見ています。小泉首相がこれに政治的な意味を含ませようとしている風には私には感じられないからですが、仮に首相の公的な立場での行為として見ても、国の行う儀式や行事に近い「色彩」を帯びはいるものの、「政治的」とまでは言い難い気がします。それは小泉首相の発言からも忖度できるように思います。

 この問題については、法理論・判例や条文の純粋な適用だけでなく、宗教観、文化的要素、歴史的背景、民俗的風習、死生観など関連領域の研究成果を総動員し、周辺諸国からの物言いとは独立して、自分達の文化と社会(故に私達の世界観・価値観)に関わるものとして捉え、多くの方に考えを深めて頂きたいと思います。法曹として、これからも益々の御活躍を期待しています!

最後に、私が読んだ中では一番自分の生活感覚に近いと感じられた「政教分離」についての論考のHPアドレスを以下に。

http://homepage2.nifty.com/hinakom/genkoukenpo2.htm

Posted by: YW(ヤンキーウィスキー) | October 25, 2005 07:07 PM

TBどうもありがとうございました。
靖国神社違憲判決自体がなかったことにしたい方が多いのには困ってしまいます。
高裁の確定判決なのにいろいろと詭弁をこねくりまわす方々が多く、当然の前提になる定義を知らないわりに、居丈高な感じに間違いを正しますと書き込まれて仕方なくコメントを何度も削除したりもしました。
この国には法学部を卒業した人間が多い割には流言飛語のほうがまかりとおることが多すぎるのが不思議でならないのですが、私もあまり上手に説明できないので、山口さんのような方がいてくださると本当に助かります。しかも私自身が卒業後ン年も経つとどうも怪しくなってくる部分も多くて(苦笑)。
thessalonike2さんの間違いについては、コメントを受け付けていないので、判決が出たときの私のエントリのTBだけ送っておいたのですがあまり理解していただけていなかったようです。丁寧に解説していただいてどうもありがとうございました。
靖国神社参拝の違憲判決が確定した事実でさえも伝わりにくい現状は頭が痛いです。

Posted by: miyau | October 26, 2005 01:17 AM

思想は違えども法律の専門家ならではの
明瞭な答えです。そうでなけれぱ橋下弁護士
の向こうを張る事は到底出来ますまい。

同じ思想の者でもあっても失態を失態を
認めるのが法曹人の取るべき態度で
有ります。法を捻じ曲げる者は法曹人
たる資格が無いのは世間一般常識
で有りますから。

Posted by: abusan | October 26, 2005 05:02 AM

 トラックバック送っていただいてありがとうございました。
 どのような意見にせよ、両者の意見をぶつけあい、議論を行うことによってこそ、意見というのは意味を持つとは思うのですが……。
今のthessalonike2氏には反論や批判も多いとは思われますが、まずは表に出てきてほしい、というのが正直な意見です。
 そういった意味でも(もちろん靖国問題においても)、この法曹界からの指摘は大きな意味を持つと思っています。

Posted by: 田中 恵一 | October 27, 2005 12:29 AM

「愛を知らなければ」というブログをやっておりますkazitiと申します。
 ごめんなさい、トラックバックを二重に送信してしまいました。
 お手数ですが、このコメントと共に一つは削除して頂きますようお願い申し上げます。

Posted by: kaziti | October 27, 2005 01:41 AM

やはり、諸悪の大元はアメリカ人に押し付けられた日本国憲法ということですね。

憲法改正
 ↓
総理の靖国神社公式参拝

が一刻も早く実現できるように我々ブロガーも世論形成に力を尽くしていきたいと思います。

Posted by: 青い炎 | October 27, 2005 02:45 PM

いままで私が混乱していた、上告して争う事ができるのかどうかどうかという点が、わかりやすく説明されていて為になりました。 ありがとうございます。
この政治家による靖国参拝については、(1)政教分離の原則に反していないか(2)戦犯を祭る神社にサンフランシスコ条約を受け入れながら詣でるのはどうか、という二点があり、日本国内からの反対派は最初の点を、中国や韓国、北朝鮮を中心とした国々からは第二の点を、主な反対の理由としているように思えます。
このブログでは第一の点に論点を置いているようですが、第二の点を法律の専門家として議論していただけないでしょうか?
東京裁判とサンフランシスコ条約との関連、条約を受入後、どのような国内での履行手続きが行われたか、また国際慣行や当時の国際法等と照らし合わせてのこの裁判の意義等、私を含めた一般人が混乱している個所は幾つもあると思います。
よろしくお願いします。

Posted by: まほここ | October 28, 2005 08:12 AM

Impressive blog! -Arron

Posted by: mattress reviews | December 22, 2011 04:01 PM

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