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【読書】霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記

霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記

読みました。弁護士の観点から見ても非常に面白い本です。傍聴席の視点からの忌憚の無い意見が書いてあるので、仕事の上でも、参考になる本ですが、実際に、霞っ子クラブ が傍聴席に来ていると非常に緊張しします。今日、国選の刑事事件があったのですが、傍聴席を見ると、霞っ子クラブ が傍聴席に来ていました・・・。当事者に緊張感を与えるのは、司法制度全体にとっては、いいことなんでしょうけどね。

ただ、霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記はいい本なんですが、弁護人に対し、厳しすぎるのではないかと思います。

勝ち目のある事件しか起訴しない検察官に対し、弁護人は、被告人の利益を守るためには、こじつけに近い主張をしなくてはならないときもあるし、見るからに信用できない言い訳に付き合うしかないこともある訳です。しかも、刑事事件は、例え私選でも赤字のことが殆んどですし、国選弁護人の場合には、最初から採算は度外視で、持ち出し覚悟で弁護を引き受けているのが実情です。

出版元が新潮社ではしょうがないのかもしれませんが、刑事弁護人の仕事と立場に対する理解を持って欲しいなあ、とは思いました。

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【靖国神社】果たして小泉首相は憲法に違反せずに靖国神社に参拝することは可能か?

 私は、小泉首相による靖国神社参拝は、憲法違反であるという立場です。
 が、その前提の上で、果たして、小泉首相が政教分離原則に違反することなく、靖国神社に参拝できるかどうかという点を検討してみたいと思います。

 小泉首相は8月15日に靖国神社に参拝しました。小泉純一郎首相の参拝はモーニング姿で、本殿で行われています。昨年は、どのような意図か分かりませんが、スーツ姿で、一般人と同じく拝殿で参拝していましたが、一昨年以前と同様な形に戻ってしまいました。首相の靖国参拝をめぐる一連の訴訟において、最高裁が、憲法判断も公的参拝か私的参拝かについての言及することなく、原告側の上告を棄却したことも影響しているのかも知れません。
 ただし、最高裁判所が上告棄却という判断を示したことは、小泉首相の靖国神社参拝について合憲という判断を裁判所が示した訳ではありません。わが国には、国家の違法または不当な財務会計上の行為を市民が直接に問うことを認める訴訟類型がありません。原告らとしては、小泉首相の靖国参拝については、「信教の自由」という権利が侵害されたことを理由とする一般不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起せざるを得ず、民法の不法行為の枠組みによる制約があり、結果的に憲法判断に踏み込まないまま門前払いされてしまっただけです。
 このあたりの、法律論については、拙ブログの以下の記事をご参照頂ければと思います。

小泉首相の靖国参拝はやっぱり違憲でしょう

 憲法20条3項は、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と定めています。1977年7月13日の津地鎮祭訴訟最高裁判決は、「宗教的活動」の意義について、「当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為」を意味するという判断を示しています(いわゆる目的効果基準)。
 そうすると、憲法の条文と最高裁判決の枠組みの範囲内で考える場合、
要件①「国及びその機関」の行為について、
要件②目的が「宗教的な意義」を持ち、
要件③効果が「宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等」になる
という①②③の要件を全て満たす場合には、政教分離原則に違反するということになります。
 目的効果基準は、決して、政教分離の原則について、厳密に考える立場ではなく、むしろ、国家が宗教とある程度の関わり合いを持たざるを得ないことを前提とした「緩やかな分離」を志向するものです。


 要件①との関係で議論になるのは、「公的参拝」か「私的参拝」かという問題です。
 内閣総理大臣は「国の機関」であると同時に、一人の人間でもあるという側面もありますから、いずれの立場で参拝したのかという点が問題になります。「私的参拝」であれば、そもそも、「国の機関」としての行為ではありませんから、政教分離の問題は生じない訳です。政府側は訴訟において一貫して、「私的な参拝」と主張していますが、
① 小泉首相は参拝を公約にしている
② 参拝の記帳は「内閣総理大臣 小泉純一郎」
③ 首相自身が「内閣総理大臣である小泉純一郎として」参拝と明言している
④ 公用車を使っている
⑤ 首相の発言などから参拝の動機、目的は政治的なものとしか考えられない

という事実関係を見る限り、小泉首相の今回の参拝について私的な参拝という結論を導くのは難しいのではないでしょうか。
逆に言えば、献花代は私費で出し(今もそう)、公用車を使用せず、SPを伴わず、靖国参拝を政治的な公約にせず、参拝の記帳も個人名だけにして、一個人として参拝したことをはっきりと表明し、靖国参拝を政治的な争点にしないのであれば、私的な参拝というのもありえるとは思います。

 要件②は、要するに宗教的な目的が存在するのか、という点です。
 宗教的な目的が存在しない場合、例えば、首相が純粋に社会的な儀礼目的で参加している場合(結婚式や葬式など)には、要件②との関係で政教分離の問題は生じません。あと、宗教色が払拭され、単なる社会的な習俗になっている場合も、要件②は否定されます。無論、私人としての立場での参加であれば、要件①との関係で、政教分離の問題は生じません。
 神社に参拝する以上、礼拝の形式が正式な神道の礼式に則ったものかどうかは本質的な問題ではないでしょう。宗教団体である靖国神社の備える礼拝施設である靖国神社の本殿において、祭神に対し、拝礼することにより、畏敬崇拝の気持ちを表すことは、宗教的意義の強い行為としかいいようがないと思います。
 なお、神社神道は、日本の古俗であり、国民道徳の発露であるから、宗教には当たらないという見解も存在するようですが、少なくとも、裁判所は、神社神道が「宗教」であるという認識を自明視しており、それは、正しいと思いますので、この観点からの議論には立ち入りません。
 靖国神社に参拝する以上、要件②をクリアすることは難しいと思います。

 要件③は、効果が「宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等」となるかどうかです。
 この点については、
小泉首相の靖国参拝はやっぱり違憲でしょう
にも書きましたが、最高裁大法廷平成9年4月2日愛媛玉ぐし料事件判決において、最高裁は、地方公共団体による靖国神社や護国神社への玉串料等の奉納について「公共団体が特定の宗教団体に対して特別の関わりあいをもつことであり,宗教団体である靖国神社や護国神社が特別のものであるとの印象を一般に与えるもの」という判断を示しており、一国の首相が公的な立場で靖国神社を参拝する行為は、玉串料等の奉納よりも直接的に国家と靖国神社との関わりを顕示するものですからその効果が効果が「宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等」になることは否定できないのではないかと思います。
 要件③をクリアすることはやはり難しいでしょう。

 要件①、②、③のうち、要件②と③には、どうしても引っかかってしまいますが、目的効果基準は、要件①、②、③の全部に抵触した場合に、初めて違憲となるという緩やかな基準ですので、要件①との関係で、小泉首相が本気で私人としての参拝をする気があるならば、出来ない訳はありません。
 やはり、小泉首相は確信犯的に憲法を無視しているとしか言いようがありません。orz

New!
毎年この時期になると、小泉首相が靖国参拝をするかどうかで中国や韓国がお騒ぎになられますが、私は、首相による靖国神社への参拝は、基本的には、日本国憲法の定める政教分離のあり方に関する解釈の問題であり、あくまでも内政問題であるという認識です。隣国から指図されるべき問題ではないと思います。隣国として、意見を言うのは勝手ですが、両国共に、自国の行動と日本に対する行動が見事にダブルスタンダードなお国柄であることを踏まえて、大人らしく、礼儀を守って、ご意見を拝聴しておけばいいいと思います。ただし、中国と韓国の「内政干渉」がましい行為に腹を立てたからと言って、憲法を無視する口実にはなりません。その辺の区別を政治家も国民もつけて欲しいと思います。

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【宣伝】【癒しのコンサート】9条がんばれ!弁護士と市民が集う"第9"コンサート

■9条がんばれ!弁護士と市民が集う"第9"コンサート


2006年9月26日(火)   
開場 午後6:30  開演 午後7:00
  
文京シビックホール 

都営地下鉄大江戸線/三田線「春日」駅(文京シビックセンター連絡通路徒3分)
地下鉄丸の内線「後楽園」駅下車徒歩3分、地下鉄南北線「後楽園」駅下車徒歩3分
JR総武線「水道橋」駅下車徒歩8分

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