【不当決定】毒ぶどう酒「再審」取り消し、日弁連が批判声明【冤罪】
名張毒ぶどう酒事件の再審開始を取り消した名古屋高裁決定を受け、日本弁護士連合会(日弁連)の平山正剛会長は26日、「弁護団が提出した新証拠の証拠価値を具体的な根拠なく軽視し、『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判の基本原則を無視したもの」と、決定内容を批判する会長声明を発表した。
日弁連は、1977年3月の第5次再審請求以降、名張事件の再審請求を支援している。声明は、「今回の決定は、過去に自白した経緯などに重きを置き、安易にその信用性を肯定しており、過去の再審無罪事件の教訓が生かされていない」とし、引き続き支援していく考えを示した。
12月26日19時59分配信 読売新聞
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日弁連の声明からは、これを起案した人達の苦渋が伝わってきます・・・orz。
再審弁護団の先生方とその努力を知っているだけに、今回の名古屋高裁決定の不当性を痛感します。
日本の刑事司法は処罰する方向ではまあまあうまく機能しているのですが、無実の者を救済するという観点からは、本当に駄目です。ただでさえ狭い再審請求の門が、半ば開かれたと思ったら閉ざされてしまった。
再審手続というのは、傍聴人による監視の目が入らない非公開の密室内の手続です。
再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを認める制度は、廃止すべきではないかと思います。
再審開始決定=無罪ではありません。
単に、再審公判(これは傍聴可能な公開の手続きです)をやり直すというだけの話なのですから、検察官が反論すべきことがあるならば、再審公判で堂々と行なえばいいのです。
New! 付記2点
1)「疑わしきは罰せず」という刑事法の大原則に鑑みるに、二つの(※1)裁判所が「無罪」と判断した被告を死刑に処してよいのか、という素朴な疑問を禁じえない。無罪判決に対する検察官控訴の制度は廃止ないしせめて制限すべき(※2)ではないか?
(※1)第一審の津地裁は無罪判決を出している。
(※2)①法令解釈により無罪となった場合の控訴は、法令解釈の統一性を確保するためにも認めてよい
②例えば、証人に対する威迫の事実が判明した場合等に制限する。
2)50年近く自白の信用力が争われるのは不毛であるとつくづく感じた。異議審の決定は自白の信用力を肯定し、原決定は自白の信用性を否定し、それが明暗を分けている。自白の信用性の認定に割く労力は、事件の真相解明に注ぐべきである。安易な厳罰化には基本的には反対の立場であるが(※3)、仮に、厳罰化を促進する立場に立ったとしても、「無辜の不処罰」の論点は避けて通ることは出来ない。取り調べをビデオ撮影する可視化や、弁護士立会制度の導入などの対策を急ぐ必要があり、仮に、検挙率や有罪率の低下を招くとしても、一人の人間に厳しい処罰を与える以上、誤判の防止策の徹底は不可欠であると考える。
(※3)厳罰化には利欲目的の経済犯等を除いて犯罪を減らす効果がないと考えられるため。アメリカなどでは、厳罰化しているが犯罪は減らないし、日本は、刑罰が甘いと非難されつつも、世界有数の治安の良さを誇っていたし、現在でも治安は良い。
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Comments
確かに日本の治安の良さは、、
アメリカでは夜の9時以降
一人歩きをしていたら犯してください
と申しているのと同じで
レイプされたとしても
ポリスも同情などはせず
軽薄なと返ってご注意を受けちゃいますから
その点日本は女性が一人歩きをして
終電に乗っても大体はレイプの被害など
には逢うこともないでしょうしね
さらに一般人が銃保持出来るお国でもない
わけですから、治安の良さは
まだまだ良いお国に選ばれるのではないですかね
Posted by: calwestcoast | December 28, 2006 12:35 PM
裁判所の判断理由の中に「有罪の判断を覆すに足りる証拠がない」というような言い方をしていましたね。もし確定判決が出る前であればこれは全く正反対の解釈ですから、高裁の判断の根幹は「確定判決の重みを守る」ということが第一にあったということなのでしょうね。
でも、有罪の根拠になった理由は状況証拠ばかりで、当時の審理を今やったとすれば無罪になったかもしれないという状況を見ても、そうまでして精度の悪い確定判決を守る必要があるのかと疑問を抱かざるを得ませんね。
Posted by: マコ | December 28, 2006 09:42 PM