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【全国小売酒販組合中央会】酒販組合の年金破綻問題、東京と大阪で集団提訴【年金破綻】

酒販組合の年金破綻問題、東京と大阪で集団提訴

 全国小売酒販組合中央会の共済年金が外債投資で破綻(はたん)した問題をめぐり、共済年金に加入していた東京や大阪など14都道府県の115人が15日、中央会などを相手に計3億6800万円の賠償を求める訴訟を東京、大阪両地裁で起こした。

 1人あたりの請求額の平均は東京訴訟が318万円、大阪が208万円。中央会は掛け金の85%の返還を決めたが、実際に返されたのは15%にとどまり、未払いの70%を請求する。

 訴えによると、年金共済はリスクの高い外債に資金を集中して投資。約145億円が回収不能となり、破綻した。投資を主導した元事務局長が背任罪で起訴された。

 弁護団は相談窓口を開設し、被害が確認されれば追加提訴を行う方針。問い合わせは、東京03・6234・4810、大阪06・4706・1626まで。

朝日新聞 2007年01月15日19時24分
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ホームページ⇒全国小売酒販組合年金被害対策弁護団

被害者のブログ⇒酒販年金被害者の会を立ち上げよう

僕が関わっている弁護団事件の一つです。弁護団はあくまでも年金加入者の代理人です。中央会の代理人ではありません。
弁護団が結成される事件というのは、どれもそうですが、これもひどい事件です。

すごく、大雑把に説明すると・・・。
2002年3月の時点で、全国小売酒販組合中央会の共済年金事業は破綻しかかっていました。運用を担当している信託銀行からは事業の廃止を提案される程でした。
そこに、金融ブローカーのX(被告にしています)が、チャンセリー債というリスクの高い外国債である「チャンセリー債」の購入を中央会の事務局長をしている関秀雄(当然、被告にしています)=背任罪などで公判中=に持ちかけます。関は、バックマージン欲しさに、自分が実務を取り仕切っていることをいい事に、2002年12月にクレディ・スイスを介して、チャンセリー債を約145億円分も中央会に購入させてしまいます。
チャンセリー債は、2004年6月から償還が始まる筈だったのですが、約10億円の利息と遅延損害金が支払われた他は、現在に至るまで償還されていません。こうして、約145億円もの年金の原資は消えてしまい、年金加入者達は老後の生活資金を失ってしまったという事案です。

チャンセリー債を発行していた「チャンセリー・アンド・リーデンホール」という会社の実質的な代表者はウィリアム(ビル)・ゴドレーという人物です。実は、この人物が、投資被害を発生させたのは初めてではありません。ゴドレーは、英捜査当局(SFO=Serious Fraud Office)が捜査中の国際投資グループ「インペリアル・コンソリデイティッド・グループ」の中心的な人物でもあるのです。「インペリアル・コンソリデイティッド・グループ」は、1998年以降、「年利8・5%で元本確保型」などとするファンドを国内で販売していましたが、2003年の時点では120億円余りが償還不能となっていました。

詐欺事件も国際化していることを実感させられる事件です。
なお ⇒ ライブドア裏金・酒販中央会外債投資、香港の邦人関与

今回の事件は、中央会の理事や幹事達がきちんと自分達の義務を果たしてさえいれば、被害に遭うことがなかった事案です。年金加入者達の老後の資金を預っておきながら、投資内容を十分に検討しないまま、安易な投資を許してしまった責任は取ってもらわなくてはなりません。
窓口となったクレディ・スイスの責任の追及も今回の事件解決の重要な鍵の一つです。

年金加入者達の老後の生活資金が一円でも多く回収できるよう、弁護団は戦っていきます。

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【2ちゃんねる】2ch閉鎖?!

ユーザーショック…2ちゃんねる、再来週にも強制執行

ネット界激震!! 賠償命令を無視し続けてきた日本最大の掲示板「2ちゃんねる」(2Ch)の管理人、西村博之氏(30)の全財産が仮差し押さえされることが12日、分かった。債権者が東京地裁に申し立てたもので、対象となるのは西村氏の銀行口座、軽自動車、パソコン、さらにネット上の住所にあたる2Chのドメイン「2ch.net」にまで及ぶ見込み。執行されれば掲示板の機能が一時停止するのは必至だ。

 12日午前、仮差し押さえを申し立てたのは、西村氏に対して約500万円の債権を持つ東京都の会社員の男性(35)。

 男性は2Ch上で自身や家族の実名、住所を晒され、「人間の屑」「ネットストーカー」などと誹謗中傷されたため、昨年8月、管理人の西村氏を相手取り、東京地裁に書き込み者の情報開示を求める申し立てをした。

 西村氏が出廷してこないまま同9月に開示を命じる仮処分が出たが、何ら対応が得られないため、間接強制で1日5万円ずつ制裁金を科すこととなった。それでも西村氏の法廷無視は続き、決定から100日を経て債権は500万円に膨れあがった。

 夕刊フジ既報の通り、西村氏は一切の賠償命令を意識的に無視し続けている。昨年11月の講演会では「子供の養育費の踏み倒しと同じ。賠償金を払わせる方法はこれ以上ない。イヤなら法律をつくればいい」と強弁した。

 強気の背景には、何ら差し押さえられるはずがないという自信があるとされる。西村氏には固定資産がなく、給与の流れも不明なので、一般的な差し押さえは無理。弁護士が銀行口座を探り当てるなどしてきたが、西村氏も海外に資産を移すなど対抗策を講じてしまい、どの債権者も手をこまねいているのが現状だ。関係者によれば「(西村氏は)時効成立まで逃げ切るつもり」だという。

 男性も西村氏が所有する軽自動車の標識番号や銀行口座など、差し押さえられるものを何とか突き止めた。申し立てに際して周囲から「返り血を浴びる」「またネットでたたかれる」とたしなめられたが、「年収は1億円」とさまざまな媒体で放言する西村氏を見て意を決した。

 「被害者はみな、高い弁護士費用をかけながら賠償金を取ることもできない。当の西村氏は悠然と賠償命令を無視して億単位を稼ぎ、『賠償金が取れない法律に問題がある』と開き直っている。だから恨み言や批判を言うのはやめて、法律にのっとって被害者の痛みを少しでも知ってもらう」

 今後、西村氏の異議申立期間もあるが、これまでと同様に出廷しない場合、早ければ再来週にも強制執行が始まる。

 今回の仮差し押さえは、西村氏個人はもとより、1000万人ともされる2Chユーザーにも大きな影響を及ぼす公算が大きい。東京地裁の「値段がつくものは差し押さえ可能」との判断から、「日本国内では前代未聞」(ドメイン登録機関)とされるドメインの仮差し押さえも行われるからだ。

 手続きが進んでドメインの所有権が移り、2Chというサイトがネット上の住所を失ってしまうと、ユーザーが従来の「2ch.net」にアクセスしても、何ら閲覧できなくなる。

 運営側が掲示板の継続を望むなら、新たなドメインを取得して全システムを引っ越す必要があるが、「2Chはリスクを分散するため、50台ものサーバーが各自独立しており、全体を統括するサーバーがない。データの書き換えは容易でなく、引っ越しに2週間は必要だろう。さらに新ドメインを周知するのが大変だ」(IT業界関係者)。

 男性は「西村氏の収入源は2Ch上の広告なので、すぐに新しい掲示板をつくるだろうが、いたちごっこは望むところ。次は自分以外の債権者が同じ手段に訴えてくれるはず」と、泣き寝入り状態にある全国の債権者に共闘を呼びかける。

 元旦から全国紙に登場するなど注目度満点の西村氏だが、新春から手痛いしっぺ返しを食らうことになった。

ZAKZAK 2007/01/12
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法律家として、裁判所の判決すら平然と無視するひろゆき氏の法律無視の無責任な対応には極めて批判的です。法治国家である以上、裁判所の判決にしたがわない以上は、強制執行されるのも当然のことです。

しかし、本当に2ch.net というドメインを差し押さえて、「2ちゃんねる」を活動休止に追い込むことが出来るのか、法律実務家としては、幾つかの技術的な疑問が湧き上がってきます。

裁判所の間接強制の相手方は、誰なのでしょうか?
相手方がひろゆき氏個人であれば、差し押さえが可能になのは、原則として、ひろゆき氏名義の財産だけです。

確たる根拠はないのですが、2ch.net というドメインの登録者はひろゆき氏個人の名義ではなく、どっかの外国企業だった筈です。この場合、強制執行(差し押さえ)をしようとする者は、ドメイン名の登録者を相手取って訴訟を起こして判決を取らないといけません。第三者名義の財産を差し押さえることは不可能とはいいませんが、法律実務家として考えると、相当に難しいのではないかというのが実感です。

「差し押さえ」というと、差し押さえの紙がペタペタというイメージがありますが(※)、東京都の会社員の男性(35)が有している権利は、あくまでも「500万円払え」という金銭債権ですから、「差し押さえ」の目的は、あくまでも 2ch.net を換金して、その売却代金を500万円の支払いに充当する訳です。
換金の手続きは、競売です。ドメイン名の競売をして、買主(競落人)が決まり、代金が支払われたところで、名義の書換えをすることになるのですが、外国の会社が素直に日本の裁判所の判断を受け入れて名義の書換えに応じるかは疑問です。

(※)「壺」は既に差し押さえられているようです。このユーモアのセンスというか、即応の妙というかは、個人的には好きです。

第96条(封印等破棄)
公務員が施した封印若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法で無効にした者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

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【独り言】31歳になって

 本日、31歳になりました。
 30歳から31歳までの1年間は、「あっ」という間でした。気のせいでしょうか、時の流れは歳を経るにつれて加速的に早まっているような気がします。

 30歳となった昨年、コミケの米澤代表は逝き、国選弁護活動は司法支援センターと称する法務省の出先機関に乗っ取られ、議論が尽くされぬまま教育基本法は強行的に改定されました。混迷を強める世相の中、目先の安全と秩序を口実に、自由を失ってしまう危機感と常に隣り合わせの一年でした。

 ただ、アメリカにおいて民主党が中間選挙で勝利し、共謀罪が水際ではありますが成立が阻止され、住基ネットについて高裁段階における初の違憲判決が出るなど、自由を求める勢力が盛り返す機運も見えつつあります。

 弁護士生活も6年目に突入しました。新人のときの心意気を忘れず、さらに、弁護士としての実力をつけ、問題意識を磨き、市民の自由を守る防人として、実力を育んで行く一年にしたいと考えております。

 さしあたり、グロービートジャパン(らあめん花月)・日本平和神軍事件と松文館事件で無罪判決を勝ち取り、少なくとも表現の自由という側面からは、閉塞感に風穴を明けたいところです。

 本年も、皆様方の御支援・御鞭撻を何卒よろしくお願い申し上げます。

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