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【松文館事件】結果のご報告【上告棄却】

松文館事件の上告審について、2007年6月14日付で上告棄却の決定がありました。
具体的な理由の説明なく、ただ、従前の最高裁判例に追随するだけの残念なものでした。
この決定により、控訴審の罰金150万円の判決が確定することになります。

関与した裁判官は、
最高裁判所第一小法廷
才口 千晴
横尾 和子
甲斐中辰夫
泉  徳治
の4名です。全員一致の決定でした。

 上告から2年が過ぎ、これはひょっとすると、と期待していただけに非常に残念な内容でした。
 ライフワークの筈を30そこそこで達成してはいかん、ということなのでしょうか?

 表現の自由は、歴史的にも権力との戦いの中で市民が手にした基本的人権です。今回の戦いの結果は敗北でした。これは受け止めなくてはならないと思います。しかしながら、敗北を受け止めることと戦いを終えることは違います。松文館と弁護団の戦いの記録は、傍聴人の方により公開されています。これから戦う方々は、是非とも、記録を読み、批判し、また、参考にして頂きたいと思います。

松文館裁判のサイト

<閑話休題>
別の戦線の話題です。
表現の自由と言えば、忘れてはいけないのが、名誉毀損の問題です。
こちらの事件についての、支援と傍聴も是非お願い致します。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓

【黒須英治】グロービートジャパン(らあめん花月)・日本平和神軍事件の公判のご案内【中杉弘】

2007年6月18日 午後1時半~5時 東京地方裁判所428号法廷
           黒須英治(中杉弘)に対する証人尋問 
2007年6月19日 午後1時半~5時 同         428号法廷
           黒須英治(中杉弘)に対する証人尋問

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【北朝鮮】青森県で保護された脱北者に関する法律上の論点とは?【脱北者】

今年の6月2日に青森県深浦町で見つかった北朝鮮からの脱北者と見られる外国人4人の取り扱いについて、法律上の論点を「Q&A方式」で整理してみました。便宜上、「出入国管理及び難民認定法」を「入管法」と表記します。


Q①:この4人の人たちは不法入国者ということになるのでしょうか?

A①:不法入国ということになると思います。何故ならば、上陸するに先立ち、緊急上陸(入管法17条)、あるいは、遭難による上陸(同18条)の申請はなく(多分)、同許可を受けているとは思えないからです。


Q②:「警察官職務執行法に基づき保護」との報道がありますが、これは、どのような制度なのでしょうか?

A②:警察官職務執行法第3条1項本文は、「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して 次の各号のいずれかに該当することが明らかであり、かつ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、取りあえず警察署、病院、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。」と定め、第1号は、「精神錯乱又は泥酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼすおそれのある者」、第2号は、「迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者(本人がこれを拒んだ場合を除く。)」と定めています。
   この場合、第2号が適用されたのでしょう。なお、いわゆる「トラ箱」の設置根拠は第1号になります。
   ちなみに、「保護」を理由とする身柄拘束の濫用を防ぐため、第3項は、「第1項の規定による警察官の保護は、24時間をこえてはならない。但し、引き続き保護することを承認する簡易裁判所(当該保護をした警察官の属する警察署所在地を管轄する簡易裁判所をいう。以下同じ。)の裁判官の許可状のある場合は、この限りでない。」と期間制限と、延長する場合に、簡易裁判所裁判官の許可状を要求し、さらに、第5項により、延長の期間の上限を5日間と限定しています。


Q③:一時庇護上陸許可を検討しているという報道もありますが、これはどのような制度なのでしょうか。

A③:入管法18条の2が認めている制度です。以下に、条文を紹介しておきますので、お読み下さい。ポイントは、上陸に申請が必要なことです。入管法18条の2は、船舶などにいる外国人からの申請を受けて許可をする制度であって、すでに不法上陸状態にある者が申請をすることは、条文の文言上難しいと思われます。
   筋論から言えば、難民認定手続について教示をした上で、仮滞在の許可(入管法61条の2の4)を与えるべきなのですが、難民手続きを適用してしまった結果、大量に脱北者が日本を目指してしまわれたは困るとか、脱北者のふりをした工作員を送り込まれては困るとか、色々と事情があったため、一時庇護上陸許可を検討という、法律上の理屈を若干曲げた上で、「政治的な判断」による対応を行ったのではないかと思います。
   なお、 北朝鮮帰国者の命と人権を守る会が、「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」(北朝鮮人権法)第6条2項の精神に沿って彼らを難民として保護することなどを求める声明を出しているようです。 

(入管法18条の2)
第18条の2 入国審査官は、船舶等に乗つている外国人から申請があつた場合において、次の各号に該当すると思料するときは、一時庇護のための上陸を許可することができる。
 一  その者が難民条約第一条A(2)に規定する理由その他これに準ずる理由により、その生命、身体又は身体の自由を害されるおそれのあつた領域から逃れて、本邦に入つた者であること。
 二  その者を一時的に上陸させることが相当であること。
(2以下は省略)

(北朝鮮人権法6条)
第6条 政府は、北朝鮮当局によって拉致され、又は拉致されたことが疑われる日本国民、脱北者(北朝鮮を脱出した者であって、人道的見地から保護及び支援が必要であると認められるものをいう。次項において同じ。)その他北朝鮮当局による人権侵害の被害者に対する適切な施策を講ずるため、外国政府又は国際機関との情報の交換、国際捜査共助その他国際的な連携の強化に努めるとともに、これらの者に対する支援等の活動を行う国内外の民間団体との密接な連携の確保に努めるものとする。
2 政府は、脱北者の保護及び支援に関し、施策を講ずるよう努めるものとする。
3 政府は、第一項に定める民間団体に対し、必要に応じ、情報の提供、財政上の配慮その他の支援を行うよう努めるものとする。

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