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【死刑執行】「死刑執行、自動的に進むべき」 鳩山法相が提言【6ヶ月】

「死刑執行、自動的に進むべき」 鳩山法相が提言

 死刑執行命令書に法相が署名する現在の死刑執行の仕組みについて、鳩山法相は25日午前の記者会見で「大臣が判子を押すか押さないかが議論になるのが良いことと思えない。大臣に責任を押っかぶせるような形ではなく執行の規定が自動的に進むような方法がないのかと思う」と述べ、見直しを「提言」した。

 現在は法務省が起案した命令書に法相が署名。5日以内に執行される仕組みになっている。

 鳩山法相は「ベルトコンベヤーって言っちゃいけないが、乱数表か分からないが、客観性のある何かで事柄が自動的に進んでいけば(執行される死刑確定者が)次は誰かという議論にはならない」と発言。「誰だって判子ついて死刑執行したいと思わない」「大臣の死生観によって影響を受ける」として、法相の信条により死刑が執行されない場合がある現在の制度に疑問を呈した。

2007年09月25日11時41分 朝日新聞
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 「誰だって判子ついて死刑執行したいと思わない」とおっしゃいますが、刑務官の立場に立てば「誰だってレバーを引っ張って死刑執行したいと思わない」となるでしょうし、裁判官や検察官だって死刑を求刑したり、死刑判決を書くのは嫌でしょう。

 まあ、その点はさておき、一般的に刑罰の執行は検察官が指揮します(刑事訴訟法472条1項)。例外的に、刑事訴訟法475条1項は、死刑の執行は法務大臣の命令によるとしています。これは、死刑という刑罰が峻厳で、いったん執行がなされれば回復不可能であることから、慎重を期する必要があり、法務大臣は内閣の一員としての立場から、政治的・人道的視点から恩赦の可能性を含めてより慎重な判断をすることが期待されているためと解されています。
 また、同条2項が判決確定の日から6ヶ月以内に命令を出すように定めている転については、訓示規定(違反しても違法の問題を生じない規定)と解されています(参考判例参照)。

  法務大臣に対し、死刑執行命令を出すように促す死刑執行に関する上申(後述条文参照)がなされるに先立ち、法務省内部においても相当に慎重な検討が行われるようです。第三者的な立場からの検討ではないので、十分とはいえませんし、限界もあると思いますが、実際に死刑が執行されるまでの間に法務省内部においてどのような検討が行われるのかは、昭和52年4月27日の衆議院法務委員会において伊藤栄樹氏(後の検事総長)が明らかにしていますので、興味のある方は参照されて下さい。

法務委員会の議事録

 結論から言えば、法務大臣が熟慮を重ねて6ヶ月の期間を超過することはなんら問題はなく、むしろ、法務大臣が誠実かつ慎重にその権限を行使していると評価すべきなのです。仮に、死刑判決の確定から6ヶ月以内に順次刑の執行がなされていれば、死刑再審無罪4事件の当事者は、いずれもえん罪が明らかとされることなく、処刑されていたことは間違いありませんし、異議申し立てで覆ったものの、一度は再審開始決定が認められた名張事件の当事者も同様でしょう。件数は少ないですが、死刑囚に対し、恩赦による減刑が認められたこともあります。
 提言ではなく、法務大臣の職責を弁えない「妄言」に類されるべき発言でしょう。

(参考判例)
 参考までに東京地方裁判所平成10年3月20日事件の判決を紹介します。
 この事件は、死刑囚が死刑確定の日から6ヶ月以上経っているにもかかわらず、死刑を執行しないことが違法であると主張して、国を被告として、国家賠償請求を求めて提訴した事案について、東京地方裁判所は、「思うに、同項の趣旨は、同条1項の規定を受け、死刑という重大な刑罰の執行に慎重な上にも慎重を期すべき要請と、確定判決を適正かつ迅速に執行すべき要請とを調和する観点から、法務大臣に対し、死刑判決に対する十分な検討を行い、管下の執行関係機関に死刑執行の準備をさせるために必要な期間として、6か月という一応の期限を設定し、その期間内に死刑執行を命ずるべき職務上の義務を課したものと解される。したがって、同条2項は、それに反したからといって特に違法の問題の生じない規定、すなわち法的拘束力のない訓示規定であると解するのが相当である。」との判断を示して、死刑囚の請求を棄却しています。なお、この裁判において、国側も、刑事訴訟法472条2項は「訓示規定」であると主張していますし、この解釈について法律家の間ではあまり異論のないところだと思います。


(参照条文)

【日本国憲法】
第73条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
1.法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
2.外交関係を処理すること。
3.条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
4.法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
5.予算を作成して国会に提出すること。
6.この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
7.大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。


【刑事訴訟法】
第472条 裁判の執行は、その裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを指揮する。但し、第70条第1項但書の場合、第108条第1項但書の場合その他その性質上裁判所又は裁判官が指揮すべき場合は、この限りでない。
2 上訴の裁判又は上訴の取下により下級の裁判所の裁判を執行する場合には、上訴裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを指揮する。但し、訴訟記録が下級の裁判所又はその裁判所に対応する検察庁に在るときは、その裁判所に対応する検察庁の検察官が、これを指揮する。

第475条 死刑の執行は、法務大臣の命令による。
2 前項の命令は、判決確定の日から6箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。

執行事務規程(法務省訓令)
(死刑執行に関する上申)
第9条 刑訴第472条の規定により刑の執行指揮をすべき検察官(以下「執行指揮検察官」という。)の属する検察庁の長は,死刑の判決が確定したときは,法務大臣に対し,死刑執行上申書(様式第4号)に訴訟記録(裁判所不提出記録を含む。)及びその裁判書の謄本2部を添えて提出し,死刑執行に関する上申をする。

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