【表現の自由】都施設でポルノ漫画即売会、過去6回開催【同人誌】
東京都中小企業振興公社が運営する都立産業貿易センター台東館で、ポルノコミックの即売イベントが過去に6回開かれていたことがわかり、公社側は、今後は貸し出さない方針を主催者側に伝えた。
同公社は「詳しい内容を確認してこなかったが、公共施設にはふさわしくないと判断した」と説明している。
同公社によると、このイベントは「アブノーマルカーニバル」などと銘打たれ、1回に100以上の同人誌サークルが出品。少女に対する性行為や猟奇的な描写などを売り物にしたコミックも販売されたという。
主催者側から「同人誌の即売会」と説明を受けたが、公社側では具体的な内容は確認していなかった。今年5月の開催後、主催者から「来年も利用したい」と申請があり、たまたま担当者がインターネットでイベントの内容を知ったという。
(2007年10月22日14時43分 読売新聞)
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論理が逆転しています。「詳しい内容を確認してこなかったが、公共施設にはふさわしくないと判断した」とありますが、地方公共団体が運営する公共の施設だからこそ、プライベートな施設以上に、表現の自由を尊重しなくてはならない筈です。
地方自治法244条2項は、利用拒否を出来る正当な理由を定めており、東京都立産業貿易センター条例7条2項各号は、利用拒否が認められる右正当な理由を具体化したものとして解されます。
で、「善良の風俗を害する」の解釈に関する判例は見つからなかったのですが、最高裁判所は、「公の秩序を害する」という概念については、かなり、厳格な解釈をしています。「人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要」という判例が出ており、ほぼ確定判例となっています(最高裁判所平成7年3月7日第三小法廷判決)。
そうすると、「善良の風俗を害する」というのも、単に性的な出版物が頒布されているという程度ではとても該当しない気がしますし、今回のセンター側の対応は違法である可能性が高いと思います。
同人誌即売主催者は、東京都の対応に対し、自粛的な対応を取るのではなく、公共の施設の利用者として、不当な対応には屈しない気概を持って欲しいと思います。
2007.11.2 New! 公序良俗に反するかどうかの説明責任/立証責任は全面的に施設側にあります。
(参照条文-地方自治法)
(公の施設)
第244条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2 普通地方公共団体(次条第3項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。
(公の施設の設置、管理及び廃止)
第244条の2 普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。
(参照条文-東京都立産業貿易センター条例)
(利用手続等)
第七条 センターの施設を利用しようとする者は、東京都規則(以下「規則」という。)の定めるところにより申請し、知事の承認を受けなければならない。
2 次の各号の一に該当するときは、知事は、前項の利用の承認をしないことができる。
一 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると認められるとき。
二 センターの施設設備を損傷するおそれがあると認められるとき。
三 センターの管理上支障があると認められるとき。
四 前三号に掲げるもののほか、知事が利用を不適当と認めるとき。
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Comments
これ、各主催者の対応に任せて放置してると、そのうち夏と冬の本丸まで攻められそうで怖いっすね。
Posted by: 通りすがり | October 23, 2007 10:50 PM
裁判に持っていったら逆に判例作られて終わると思いますが…
証拠物件として販売されていた同人誌を提出させられて、そこらのアダルトビデオが裸足で逃げ出すレベルのエロ同人が公共の目で審査される訳ですよね。
この件で表現の自由を主張するのはどう考えても規制派に利するだけでは?
Posted by: anw | October 24, 2007 05:05 AM
>asw様
>公共の目で審査される
これは何をどういった趣旨で審査するかにもよると思います。
刑法175条に基づくわいせつ性ならフィクションの内容まで
踏み込むことは許されないはずです。
(修正の甘さなどの審査ならわかりますが)
あと、これは専門家の見解によるでしょうが
果たして「公の秩序=善良の風俗」なのか
それとも「善良の風俗」とは「公の秩序」よりも幅広く解釈されるのか
この点も大きく左右されそうです。
おそらくasw様が恐れているのは
>「善良の風俗を害する」というのも、単に性的な出版物が頒布されているという程度ではとても該当しない気がします
山口弁護士のこの見解に対する疑問でしょう。
もし「善良の風俗」が「公の秩序」と異なる公序良俗の概念ならば
例に挙がった最高裁の判例通りに「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要」
といった判断が再び出されるかは確かに分からないと思います。
公序良俗のwikipediaによりますと大きく分けてその概念は
1.財産的秩序に反する行為
2.倫理的秩序に反する行為
3.自由や人権を害する行為
の3つになるそうですが
最高裁の判例は3番に基づいたものと私は理解しましたが
もし、「善良の風俗」の解釈が2番に基づいて解釈された場合は
ひょっとするとasw様の危惧が当たってしまう可能性もあるように思えます。
この「倫理的秩序」というものが果たして
フィクションの内容まで立ち入っていい物かどうかは議論の余地があるでしょうけど。
ただ、「規制反対」の立場の人間としては
「倫理的秩序」は現実社会における活動に限るべきで
これをフィクションの中にまで認めることは
それこそ『強力効果論』を認めてしまうことになるので絶対に認められませんね。
表現の内容によって対応が変わることの正当性があるとするなら
それは『見たくない人への配慮』などのゾーニングレベルでしかあり得ず
決して『フィクション内容の“倫理”的レベル』で閉め出すことは許してはいけないでしょう。
(そんな“原則論”や“机上の正論”じゃ世間様は納得しねぇよといったつっこみはあるでしょうけどね)
長文、失礼いたしました。
Posted by: maaru | October 24, 2007 04:11 PM
来るべきものが来た、というのが正直な感想です。
いきなりコミケでは影響力が大きいので、中小のイベントをまず狙い撃ちにしたのでは?と思います。「少女に対する性行為や猟奇的な描写」の同人誌がなくても、規制推進派は別の理由を見つけてたと思います。
政治的な匂いがプンプンするのですが。昨年の規制推進の発端が石原氏の側近と言う点で。良くも悪くも公社も「役所」です。現場の役人にとっては「黙認」がいちばん楽だった筈です。また、沖縄のリゾコミでの怪文書騒ぎのように、逆に同人界内部での、何らかの確執もあるのでは?とも勘繰りたくなります。
ちなみに、ゾーニングの強化そのものは賛成です。逆にそれが「武器」になると思います。
Posted by: MC119 | October 24, 2007 10:51 PM
うわ、このタイミングでこういうコトするのか……
「漫画・イラストも児童ポルノ規制対象に」約9割──内閣府調査
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/25/news140.html
Posted by: 通りすがり | October 25, 2007 10:33 PM
通りすがり様
いよいよ政治的な匂いが、ますます強まってきましたね。
ゾーニングの強化そのものは賛成です、という私の発言、少し説明不足の感があったので、補足をしますと、あくまでも「見たくない人への配慮」という観点からです。
5月19日のコミケット準備会のシンポジウムで「利害の調整」という言葉が印象に残っています。
むしろ、こういった規制のかかってきた時こそ逆にチャンスだと思います!
少し前の規制での国会答弁で「絵」はやりすぎ、と発言したのは公明党(支持母体は、「マンガと著作権」にも出てきたみなもと太郎氏の某宗教)の議員だった記憶があります。
規制推進派や与党側も決して一枚岩ではないと思います。皆で知恵と行動力を出し合って、今回の荒波を乗り越えていきたいと思います。
Posted by: MC119 | October 25, 2007 11:00 PM
>(そんな“原則論”や“机上の正論”じゃ世間様は納得しねぇよといったつっこみはあるでしょうけどね)
私のコメントに合わせたかのような報道の嵐ですね。
以前にも、こういったアンケート結果で同じような数字がでていますし、そもそもどういった設問の仕方をしているかがあやしいですね…
どれだけの人が児童ポルノ法の趣旨や問題点を理解して上で答えているのかも疑問です。
そもそも、
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/071025/trd0710251926014-n1.htm
>フィルタリングについては、51・2%が「知らない」と答え、「よく知っている」は19・2%に留まった。
フィルタリングの存在も知らない人たちがなぜ、
『有害情報』への規制強化を望むことができるのか私には理解できません。
多くの人にまず、訴えたいことは規制や表現に関する法律のことを知ってください、ということです。
問題意識どころか知識も共有できていない状況ではこのアンケートの9割の人たちは『規制賛成派』ともいえません。
逆に言えば、多くの人はあまり、こういった問題に関心を抱いていないとも言えます。
だから、マスコミや政府が煽った“情報”に対して
そのまま『素朴な正義感』で反応してしまうのだと思います。
Posted by: maaru | October 26, 2007 12:50 AM