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「心神喪失で不起訴」一転、「完全責任能力あり」起訴

「心神喪失で不起訴」一転、「完全責任能力あり」起訴

母親を包丁で切りつけて死亡させながら、心神喪失を理由に不起訴処分になった無職の男(41)が今年7月、「心神喪失者医療観察法」の審判で完全責任能力があったと判断され、一転、殺人罪などで東京地裁に起訴されていたことがわかった。

 男に対しては精神鑑定が計3回実施され、「心神耗弱」「心神喪失」「完全責任能力あり」とバラバラの判断が示される異例の経過をたどっており、鑑定のあり方を巡っても論議を呼びそうだ。

 男は昨年12月、東京都内の自宅で、寝ていた母親(当時71歳)と兄を包丁で切りつけ、警視庁に殺人未遂の現行犯で逮捕された。近所の住民によると、男は近所とのつきあいもなく、自宅で引きこもりがちだったという。

 男に通院歴はなかったが、東京地検は、精神状態を詳しく調べるため、鑑定留置し、正式鑑定を実施。その結果、統合失調症に近い精神障害で、責任能力が著しく減退した心神耗弱と判断された。

 同地検でさらに、別の医師に簡易鑑定を依頼したところ、今度は心神喪失とされた。このため同地検は今年5月、心神喪失を理由に男を不起訴処分にし、心神喪失者医療観察法に基づく審判を東京地裁に申し立てた。

 しかし、審判での鑑定の結果、完全責任能力があったと判断されたため、同地裁が今年7月、審判申し立てを却下。これを受け、同地検が7月に起訴した。

 弁護人によると、男は「犯行を覚えていない」「殺せと言う声がした」などと話しているといい、今月16日に始まった「公判前整理手続き」では、心神喪失を理由に無罪を主張した。

9月22日14時39分配信 読売新聞
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 正式名称は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」です。

 裁判所での手続(審判)は、裁判官と精神保健審判員(精神医療の学識経験者)各1名の合議体で取り扱うことになっており、対象者(「被告人」とは呼びません)は、弁護士である付添人を選任することができます。東京地方裁判所では、検察官から審判の申し出があった事案すべてについて国選で付添人をつける方針にしており、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会に所属する弁護士の中から選任されます。

 私は、付添人として選任されたことが何回かあります。今も一件国選付添人の案件を担当しています。
 実は、検察官が責任無能力(心神喪失)、あるいは、限定責任能力(心神耗弱)として不起訴にした案件について審判手続において「責任能力あり」として却下決定が出ることは珍しくありません。
 付添人活動をしている中で感じたことは、検察官の責任能力の判断は結構いい加減だということです。付添人に選任されてから記録を読んだ時点で、「何故、心神喪失という判断をしたのか?」と思ったことも一度ならずあります。捜査段階における鑑定(簡易鑑定)は、場合によっては簡単な問診だけで判断が出ている場合も珍しくはないのです。その場合、往々にして、「精神疾患有り=責任能力なし」という判断が導かれています。

 が、精神疾患有り=「責任無能力(心神喪失)、あるいは、限定責任能力(心神耗弱)」ではありません。
 ① 事物の是非・善悪を弁別出来るか?
 ② ①を前提として、是非・善悪の弁別に従って行動する能力があるか?
という2段階の要件のいずれかを欠く場合に責任無能力(心神喪失)となるのです。

 「責任無能力(心神喪失)、あるいは、限定責任能力(心神耗弱)」について(?)な事案を引き受けた弁護士には固有の悩みがあります。それは、対象者にとっての「最善の利益とは何か?」という問題です。

○審判の結果⇒責任無能力(心神喪失)⇒精神病院での強制的な治療
○審判の結果⇒責任能力あり      ⇒審判の却下⇒刑事裁判⇒懲役

 刑務所と精神病院とどっちが対象者にとっての「最善の利益」なんでしょうか?
 非常に悩ましいですが、病気ではないにも関わらず治療を受けさせられること自体が著しい人権侵害だと思うので、審判の却下を求める活動をすることにしています。

 もう一つ、 「責任無能力(心神喪失)、あるいは、限定責任能力(心神耗弱)」であっても、強制治療の対象とはならない場合があります。
それは、治療しても効果が見込めない場合(治療の対象とはならない場合)です。参考条文の42条の下線部を見て頂きたいのですが、この法律は、治療して改善の見込みがあることが大前提となっています。治療しても改善の見込みがない場合には、刑事処分にも、この法律による医療の対象にもならないのです。

(参考条文)

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律

(申立ての却下等)
第四十条  裁判所は、第二条第三項第一号に規定する対象者について第三十三条第一項の申立てがあった場合において、次の各号のいずれかに掲げる事由に該当するときは、決定をもって、申立てを却下しなければならない。
一  対象行為を行ったと認められない場合
二  心神喪失者及び心神耗弱者のいずれでもないと認める場合
2  裁判所は、検察官が心神喪失者と認めて公訴を提起しない処分をした対象者について、心神耗弱者と認めた場合には、その旨の決定をしなければならない。この場合において、検察官は、当該決定の告知を受けた日から二週間以内に、裁判所に対し、当該申立てを取り下げるか否かを通知しなければならない。

(入院等の決定)
第四十二条  裁判所は、第三十三条第一項の申立てがあった場合は、第三十七条第一項に規定する鑑定を基礎とし、かつ、同条第三項に規定する意見及び対象者の生活環境を考慮し、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める決定をしなければならない。
一  対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、入院をさせてこの法律による医療を受けさせる必要があると認める場合 医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定
二  前号の場合を除き、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、この法律による医療を受けさせる必要があると認める場合 入院によらない医療を受けさせる旨の決定
三  前二号の場合に当たらないとき この法律による医療を行わない旨の決定
2  裁判所は、申立てが不適法であると認める場合は、決定をもって、当該申立てを却下しなければならない。

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Comments

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