【法令用語】「疑似児童ポルノ」初摘発 わいせつDVD販売容疑【にはない】
警視庁保安課は17日までに、わいせつ図画頒布の疑いで写真家力武靖容疑者(48)=東京都渋谷区幡ケ谷=と、DVD制作会社社長河野憲一容疑者(35)=山口県下関市一の宮町=を逮捕した。
力武容疑者は成人女性を少女風に撮影する「疑似児童ポルノ」と呼ばれる分野で有名な写真家。同課によると、容疑を否認している。疑似児童ポルノが摘発の対象になったのは全国初という。
逮捕容疑は6月、局部を露出したわいせつDVD計45枚を東京都新宿区と千代田区のビデオ店に販売委託した疑い。
力武容疑者は「少女を撮ると違法になるので、成人をモデルにした」と話しており、同課はDVDを、児童ポルノの代替物として販売していたとみて調べている。
DVDは1枚8千円で、2容疑者は約250枚を制作。昨年春からDVDなどで約1億4千万円を売り上げていた。
2009/09/17 13:46 【共同通信】
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今さらですが、印象操作乙。
「疑似児童ポルノ」という言葉は、我が国の法令の中にはありません。今回の適用法条は、わいせつを取り締まる刑法175条であり、モザイク、あるいは、「消し」を濃い目にしておけば、摘発の口実はありませんでした。
モザイクが薄かったために摘発されたという点については、敢えてコメントしませんが(刑法175条は憲法違反であると考えてはいます)、
>力武容疑者は「少女を撮ると違法になるので、成人をモデルにした」と話しており、同課はDVDを、児童ポルノ
>の代替物として販売していたとみて調べている。
が何故悪いのかさっぱり分かりません。
成人をモデルにしたのは、コンプライアンスをきちっとしようとしたということでしょうし、児童ポルノの代替物が出回れば、それだけ、児童ポルノを消費するニーズが減り、児童に対する人権侵害も減ることになりますから、むしろ、好ましいことでしょう。
もし、警察が児童ポルノの代替物であることを重視して、摘発に踏み切ったのだとすれば、これは、表現の自由の観点から見て由々しき問題です。
児童ポルノ禁止法の趣旨は、児童の人権を守るためのものであり、成人女性を被写体とする性表現を規制するものではありません。
児童ポルノ禁止法が禁止しているのは具体的な児童の人権を侵害する表現行為であり、児童の人権侵害を伴わない児童をテーマとする、あるいは、児童と性をテーマにした表現行為は禁止されていません。
児童ポルノの代替物である「疑似児童ポルノ」であることを問題視して、刑法175条を利用して摘発するということは、児童の人権とは関係なく、テーマ、あるいは、内容に着目して表現規制を行うことについて、警察当局が違和感を持っていないということになります。
仮にそうだとすれば、警察は表現の自由の重要性を全く理解していないということになりますし、今回の摘発行為は、形式的には既存の法令を適用したに過ぎないにせよ、警察当局による表現の自由に対する挑戦行為であるとも言えます。
今後とも、警察の動きに対する注視が必要でしょう。
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Comments
規制反対派の間でもあまり話題になりませんでしたが(彼らは日本ユニセフ関係の話題にしか興味がないのでしょうか・・・)、6月に行われた国家公安委員会の定例会議で警察関係者が当時の与党(笑)にエールを送る国民運動を実施していくと発言しています。今回の印象操作もその運動の一環ではないでしょうか。ちなみにこの定例会議の場には松文館裁判の高裁を担当した元判事がいたと報告されています。
http://d.hatena.ne.jp/killtheassholes/20090902
Posted by: ai | September 30, 2009 01:19 AM
以前から思っていましたが、「児童ポルノ法改悪反対」などもよいと思うのですが、防戦(反対)一方の運動のあり方もどうかなぁと。
今回の事件では、刑法175条が存在する限り、結局警察による恣意的な法運用を防げない、ということが分かったと思います。
政治運動というのは継続性も大事だと思うので、ここらで「刑法175条改正運動」などを始めてみるのもいいのかも知れません。
175条の現状の運用は「表現の自由」や「罪刑法定主義」といった憲法の根本概念に反しているので、疑問を持っている人が多いのではないでしょうか。
Posted by: Hiz | October 27, 2009 08:47 PM