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厚生労働省のパンフレット「妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さんの放射線へのご心配にお答えします。」が非常にミスリーディングな件について

厚生労働省が、放射線を心配する妊婦さんや乳幼児のお母さん向けのパンフレットを作成し、300万部刷って配布するそうです。


妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さんの放射線へのご心配にお答えします。


「放射線の心配にお答えします」という筈が、「水」も「空気」も「食べ物」も国が基準を決めているから安全と繰り返すだけであり、基準の中身にすら触れてません。

食品安全委員会は、「放射性物質に関する緊急とりまとめ」のポイント(「放射性物質に関する緊急とりまとめ」)において、

今回は既に定められている暫定規制値の妥当性について検討したもではなく、今後、リスク管理側において、必要に応じた適切な検討がなされるべきである。

今回は、緊急的なとりまめを行ったものであり、今後、諮問を受けた内容範囲について継続して食品健康影響評価を行う必要がある(p1)。

放射性物質は、遺伝毒性発がん性を示すと考えられ、発がん性に関する詳細な検討及び胎児への影響等について詳細な検討が本来必要であり、今回の検討では、発がん性のリスクについて詳細な検討は行えていない等、さまざまな検討課題が残っている。

さらに、ウラン並びにプルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種についての評価、放射性ヨウ素及びセシウムも含めて遺伝毒性発がん物質としての詳細な評価、各核種の体内動態等に関する検討も必要である(p2)(なお、「放射性物質に関する緊急とりまとめ」本文p27)。

と述べていることからも明らかなように、放射性物質の遺伝毒性発がん性については詳細な評価が出来ないという立場です。今直ちに健康被害が起きないというだけで、将来的に安全と言っているわけではありません。

この点は、 「放射性物質に関する緊急とりまとめ」の図解 を見れば、より一層明らかです。

しかしながら、厚生労働省のパンフレットは安全です、安全ですと連呼しているようなもので、国民を意図的にミスリードしようとするものであると言わざるを得ません。

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出荷自粛サンチュが販売されていた問題を考える

出荷自粛サンチュ、十数社に 千葉の業者「自ら判断」

基準を超える放射性物質が検出され「出荷自粛」とされていた千葉県旭市産の葉物野菜サンチュが、大手スーパー「イオン」(千葉市)のほか、全国の小売店などに出荷されていた。旭市の集荷業者「グリーンファーム」が13日、東京、大阪、三重、広島、島根の各都府県の計十数社に出荷したと明かした。

 グリーンファームの杉藤和夫社長は朝日新聞の取材に、「あくまで自粛で、出荷が禁止されていたわけではない。自分で問題ないと判断した」と説明。一方で出荷先の詳細は明らかにしなかった。枝野幸男官房長官は同日の記者会見で「千葉県に適切な管理をするよう要請した」と述べた。

 出荷先のうち、唯一、記者会見したイオンは、自粛期間に首都圏の57店舗で計約2200パックを販売していたと発表した。販売した「サンチュ(つつみな)」は1パック10枚入りで128円。3月30日から4月7日にかけて東京都と神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、山梨の各県の店舗で販売した。

 グリーンファームから3月29日、「28日の市の独自検査で基準を下回ったので出荷を再開したい」と要請があった。グリーンファームとの取引は20年以上続いているという。イオンは「国や自治体のルールに従うべきだった。お客様にご迷惑、ご心配をかけおわび申し上げる」としている。

 農林水産省は13日、イオンに経緯の説明を求め、出荷自粛品を販売しないよう求めた。イオンは今後、サンチュ購入者に店頭で返品や返金に応じる。

 農水省はまた、小売り・流通の各団体に対しても、出荷停止や自粛をしている農林水産物を仕入れることがないよう周知・徹底を求める通知を出した。また原子力災害対策特別措置法で出荷停止が指示されている福島、茨城、栃木、千葉の各県に、徹底を求める通知も出した。

 旭市産の葉物野菜を巡っては、東京都が3月20日、都内で流通していたシュンギクから基準(1キロあたり2千ベクレル)を超える同4300ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたと発表。旭市は翌21日に葉物野菜の出荷を自粛した。

 千葉県は25日、県の検査でサンチュから同2800ベクレルが検出されたと発表し、29日に同市などに出荷自粛を要請。政府は4月4日になって原子力災害対策特別措置法に基づき出荷停止を指示した。

2011年4月14日3時18分 朝日新聞
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サンチュが安全かどうかではなく、消費者に対する情報公開、説明責任の問題です。消費者問題と言えます。

言うまでもなく、リスクゼロの生活はありえません。生きることは、回避できないリスクとの折り合いをつけることであり、様々な事情を考慮して、そのリスクが許容できるものであるか否かを判断していくしかありません。、

年齢や人生設計に鑑み、この程度ならいい、という判断もあるでしょうし、妊婦や幼児がいるので、控えるという判断もありえます。が、少なくとも「県が販売自粛要請している」という情報は開示しないと判断出来ません。この点について、情報開示を怠ると、被災地、被災地周辺を産地とする農産物全てが「怪しい」ことになってしまいます。

「スーパーで売っている野菜」=「きちんと情報が開示されているもの」という信頼関係が維持されればこそ、敢えて買い控えをしないという消費者の自立的な価値判断と選択が可能になります。消費者からの信頼がなくなったら、消費者は「風評」と「本当のリスク情報」の区別がつかなくなり、リスクを回避するために、買い控えするしかなくなり、生産者は本当の意味での風評被害に遭うことになります。

言うまでもなく、生産者が被害者であることは明らかですが、真の加害者は、被災地の農作物を忌避する消費者ではなく、東電や国であることを忘れてはならないと思います。生産者の被害を填補する責任を消費者に対する情報隠しを行い、不意打ち的なリスクを負わせることにより埋め合わせるべきでないことは、言うまでもありません。

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