ダウンロード違法化パブコメ(2019年10月版)
PDFでパブコメをアップしました。
ダウンロード違法化に向けての動きが再度動き出しました。
ダウンロード違法化の是非・必要性という幹の部分ではなく、「この行為は違法なのか?」「では、あの行為はどうなのか?」といった細かな議論に関心が向いていることは残念です。このまま法が改正されたら、日本人の規範意識と順法精神の高さの裏返しであるところの重箱の隅を爪楊枝でほじくるような「コンプライアンス遵守」や順法精神、それにつけ込む密告や脅しの結果としてインターネットの自由が損なわれるのではないかと懸念しています。違法ダウンロードの結果として伝達される情報の重要性ではなく、違法ダウンロードにばかり焦点が当てられ、違法ダウンロードであるが故に情報を利用することが問題視される「過剰コンプライアンス」、「コンプライアンスの暴走」という視点は必要です。
特に公的な、あるいは公的資金の入っている研究機関などのようにコンプライアンスの問題について是々非々の対応をしにくいところは、「コンプライアンス厨」からのクレームに強い影響を受けて萎縮しやすくなるでしょうし、多くの研究者が利用している科研費を使った研究も同様でしょう。
市民がお互いの行為を「それは違法だ」と監視しあって盛り上がるような状況が跋扈すると、社会全体における情報発信行為が萎縮してしまいます。法改正によって一般の市民が摘発され、刑事罰を科されるようなケースが続出することは考えにくいかもしれませんが、むしろ細かい揚げ足取りが増えて自由が損なわれ、社会が息苦しくなるという副作用の方を懸念すべきでしょう。
業務上の正当行為等のようにダウンロードOKな場合でも金銭の支払いを当然に要求するような疑似著作権が横行し、著作権法とかけはなれた運用が横行する可能性も高いでしょう。
「コンプライアンスの暴走」、「過剰コンプライアンス」の結果、インターネットがワルモノとウソツキを利する場になっては本末転倒です。
通信とは情報のコピーなので、コピーこそがネット技術の本質です。情報の流通の阻害、エビデンスの収集行為の阻害は、インターネット上の情報の検証を困難にし、ウソツキを利するだけです。
例えば、私は弁護士としてカルト問題に取り組んでいます。ネットには脱会者等が入手したカルト団体の貴重な内部資料がアップロードされていることがあります。
こうした資料は、団体の許可をえずに脱会者が勝手に、つまり違法にアップロードしたものでしょうし、それをダウンロードすれば今度の法改正では違法になるのでしょう。しかしながら、このような情報が問題の解決や当該団体の実態についての解明に資することは多いのです。悪徳商法などが疑われる企業などの内部文書であっても、同じことです。
弁護士、ジャーナリストや研究者等であれば、正当業務行為ということで違法ダウンロードやスクショについても正当業務行為として免責されるとは思います。しかしながら、インターネットの良いところは、社会的な立場に関係なく平等に情報発信し、その情報の質により評価されることにあります。カルト問題に限らず、社会的な問題への取り組みについては、裾野を広げることが大切であり、問題意識を持った一般の人と専門職とでインターネットを利用した情報収集が許される限度について線引きをすることになれば、自由なインターネットとは言えないでしょう。
他にも、フェイクニュース、科学的根拠のない健康情報などが社会問題化していることからも明らかなとおり、インターネットにおける情報は玉石混交であるが、インターネットにおける情報の正確性を確保するためには、インターネットユーザーによる検証行為が重要ですが、そのためには、丹念な資料の収集(特に、改変されないように保全すること)、整理行為が必要不可欠です。特に、日本の法律では、名誉毀損訴訟では訴えられた側が真実性の立証責任を負うために、ダウンロード違法化が実現すると裁判対策の証拠収集も難しくなり、本来勝訴できる筈の名誉毀損訴訟でも敗訴してしまい、裁判所がウソツキにお墨付きを与える結果になりかねない。
※著作権法42条1項はありますが、裁判段階以前の資料収集のためのダウンロードは保護されません。
ダウンロードの違法化がなされると、検証行為の大前提としての資料の収集が困難になり、検証行為を阻害してしまい、結果的にインターネットにおける情報の質を劣化させてしまい、インターネットがウソツキを利するだけの場に堕してしまうでしょう。
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